「なかなか決まらなくて、1人で体育館を借りてトレーニングしたり、モチベーションの維持も大変でしたけど、そういった中で圭さんと鵜澤HC、クラブが前向きに考えてくださって、獲ってもらったのは本当にありがたかったです。だからこそ新潟のためにという想いで戦ってるので、1試合1試合がただの1勝じゃない。圭さんや潤さん、クラブやブースターの方々のためと思ってやってます」
五十嵐だけでなく、鵜澤HCも三菱電機でともに汗をかいた仲間。新潟入団までに時間を要し、チーム合流からわずか1カ月でシーズンが開幕したこともあってか、「喜んでる暇がなかった(笑)」と長谷川は言うが、「こうやってまた毎日顔を合わせて練習してコミュニケーションを取るようになって、悔しさも勝った喜びも分かち合えるのは懐かしいし、最高です」と声のトーンは上がった。

かつてB1で地区優勝も成し遂げた新潟がB3まで降格し、クラブ再建の道半ばであることも、長谷川にとっては大きなモチベーションとなっている。クラブ再建に関われる喜びを問われると、「いやーもう、めちゃくちゃありますね」と長谷川の声はさらに弾む。
「それこそ地区優勝したときは対戦相手(当時滋賀レイクスターズに在籍)で、ブースターさんの熱量も含めて強かった新潟を知ってますし、再建というところもクラブ側や他の選手から耳にすることが多いので、その一員にさせてもらって、口だけじゃなくて実際の行動で示すというのはやりがいがありますね。もちろん、バスケットさせてもらうことはどこに行ってもやりがいがあるんですけど、僕の場合は状況が状況で、拾ってもらった身。ただ拾ってもらっただけで終わらず、地域の方々に恩返ししつつ再建にも携わるというのは、これ以上ないやりがいだと思います」
開幕当初はベンチスタートだった長谷川も、濵高康明の故障に伴って第4節からスターターとなった。そこから東京Z戦までの12試合で10勝と、長谷川のスターター起用はチームの浮上とほぼリンクしている。下記のコメントの最中に通りかかった鵜澤HCの「ノブのおかげだよ~」という一言には、一点の曇りもない。
「もちろん勝つって楽しいですし、嬉しいですし、そういうのが数字に出たり形になって表れるというのは、よりやりがいを感じられます。逆に負けが先行しちゃったら、全部が僕のせいというわけじゃないですけどやっぱり良い気はしない。勝ち星が増えていってるのは、僕のおかげとは思ってませんけど良かったなってホッとしてます。シーズンは長いですし、4連敗から始まってブースターさんたちも『大丈夫かな』ってなってたと思うんですけど、なんとか今は立て直せてきてると思うので、この調子でしっかり勝ち星を重ねて、最終的には優勝できるように頑張りたいです」

引っ越して約3カ月、新潟での生活にも少しずつ慣れてきているかと思いきや、当の本人は「たぶんこれからが本番(笑)。新潟の冬が本気を出す時期はここからだと思うので、子どもは雪を楽しみにしてますけど、妻と僕はちょっと震えてます(笑)」ということだ。しかしながら、チームもここからが本番といきたいところ。降り積もる雪に負けじと白星を重ねていけるかどうか、長谷川の貢献はますます必要になっていく。
文・写真 吉川哲彦











