「僕は1回の練習に入るにあたって、ちゃんと準備しなきゃ気持ち悪いんです。それぞれがどれくらい準備するかの基準は周りに任せるしかなくて、僕はそれをしたいからやってるだけ。ただ、それを周りが見てくれて、コーチが評価してくれて、若い選手たちが『これだけ準備するんだ、オフの日もこんなにトレーニングするんだ』と共感してもらえたらいいと思います。でも、今偉そうにこんなこと言ってますけど、彼らもやってるんですよ! 僕以上にバスケットに真面目なので、全然心配してないです。だから、僕は意外とすることがない」
これまでB3を経験したことがなかったという事実は、今シーズンの中務を大きなチャレンジに向かわせる要素の一つ。環境の整ったB1クラブで9シーズンも過ごしてきたことを考えれば、B3の環境に慣れるのは簡単ではなく、中務も「HCからいろんなことを聞きながら、覚悟して来た」とのことだ。しかし、1回引退を決断して気持ちの面でスイッチを切っていたことで、かえって順応できたという感覚もあったようだ。

「名古屋と比べると大変なところがあると想像してましたけど、スッと入れたのは、やっぱり1回引退してたんですよ、たぶん。それまでは、日本一を目指すチームのためにどうするかを考え続けてた中で、求めてた基準があったと思うんですけど、1回引退したがために、そのハードルがグッと下がった。練習場だけでこんなに移動するんだとか(笑)、聞いてた通り面白い。確かにしんどいこともあるんですけど、それをわかった上で来たんだからそれも素直に楽しもうって。
あと、他のB3の選手を見たり話をしたりもする中で、この徳島は未来を描けるんですよ。オーナー会社がいて、B.ONEからBプレミアにどう入っていくか、地方創生の先に何があるかを真剣に考えていく流れがあって、この熱量があればやれると感じました。そこの印象は僕が想定していた以上に良かったですし、勉強させてもらってます。そもそも名古屋と違って3千人、4千人入る会場がないところから始まってるので、そこに関わっていける面白みがありますね」
小林HCも「応援というよりは一緒に戦うという雰囲気がホームゲームにはあります。今シーズンのテーマが『さらに力強い渦潮へ』ということで、いろんな方を巻き込んでもっともっと大きな渦になって、徳島一丸で次の目標に向かっていきたい」と地域のポテンシャルを感じている。まだ若いクラブの土台を作ることは、中務にとっても良いモチベーション。「怪我人が出て、試合に出てなかった中務がシュートを決めて勝つみたいな仕事は、このチームではまだできてない。そういう瞬間がなくて優勝すればそれはそれでいいし、そういう瞬間があったときに仕事ができるように準備はしっかりやっていきたい」という中務は、徳島ガンバロウズというチームにとっても、クラブ全体にとっても重要な役割を担っている。

文・写真 吉川哲彦



 
    








