昨シーズンは9位と、あと一歩のところでプレーオフ進出を逃した徳島ガンバロウズ。B3参入3シーズン目は小林康法ヘッドコーチと、10人の新戦力を迎えて臨んでいるが、第4節を終えた時点で7勝1敗。それも、金沢武士団とのGAME2に敗れるまで開幕7連勝というロケットスタートだった。
アウェーで戦った第5節も、東京ユナイテッドバスケットボールクラブに連勝して単独首位。特にGAME1は相手のお株を奪うようなディフェンスと、今シーズンの武器となっている3ポイントで先手を取り、理想に近い勝ち方ができた。小林HCも「私たちらしく激しいディフェンスをして、そこから良いトランジションにつなげることができた。プレータイムをシェアしながら、高い強度で自分たちのバスケットを遂行することができました」と試合内容に満足している様子だった。

昨シーズン、ルーキーHCとして岐阜スゥープスを率いた小林HCは、徳島の指揮官となって3人の選手を岐阜から呼び寄せている。その3人がチームへの戦術浸透に一役買っていることは間違いないが、ある意味ではその3人以上に小林HCをサポートしている選手がいる。名古屋ダイヤモンドドルフィンズで現役引退を表明したはずが、それを撤回して徳島の一員となった中務敏宏だ。
実は、小林HCの元には古巣の名古屋Dから復帰のオファーが届いていた。その会談のために名古屋Dの事務所と体育館を訪れた際、小林HCはある光景を目にした。
「私が足を運んだのが、ドルフィンズのシーズンが終わった次の日だったんですけど、彼はワークアウトしてたんですよ。その姿を見て『トシさん(中務)の心の火はまだ消えてないんだな』と感じたんです」
その後小林HCは徳島からのHCオファーを受諾し、それに伴って中務に声をかけた。「1回気持ちが切れた上で、ポンと話が来た」と振り返る中務は、既にそ引退後の道も思い描き、それに向けて動いてもいたが、それらは一旦先送り、すなわち引退撤回を決断するに至った。
「クラブとしてのビジョンと、小林HCがどうしたいかという話の上で、中務に求める部分を熱く語ってくれたので、家族に許可をもらって決めました。体は動いてたのでそこは心配してなかったんですけど、いろんな方にいろんな形で協力してもらって引退したので、そこにどう筋を通すか。『こういう話があって迷ってます』というのを、ドルフィンズさんも含めて相談させてもらいましたし、大阪に帰ってからの生活をこうしようというのもあったので、そこもごめんなさいしました。彼と一緒に夢を見るのも面白いな、自分の人生の中ではこういうのもアリだなと思って、わがままを貫き通させてもらった感じですね」

そんな中務は、ここまでの徳島の戦いぶりを「まず怪我人がいなくて、みんなが良いコンディションでバスケットができてる。HCがやろうとする難しいバスケット、フィロソフィーの部分も全員で考えながら共有できてるのが一番大きい」と振り返る。金沢に黒星を喫したことについても「何故こうなったかというのがハッキリしてたんですよ。選手たちもわかってたし、コーチからも同じ内容のフィードバックがあって、それをどうすればいいかというのを全員でやれたのが良かった」と、引きずることなく東京U戦を迎えられた実感を持っていた。
小林HCは、デマーカス・ベリー前HCとザック生馬前GMの体制で2シーズン築かれてきたものを尊重し、一体感を重視してチーム作りを進めてきた。良いスタートを切ることができたのはその成果であり、そこに中務の存在も大きく関わっている。



 
    








