藤田は2016-17シーズンに鹿児島でプロデビューを果たし、その後の2シーズンは仙台89ERSと愛媛オレンジバイキングスでプレーしたが、2019-20シーズンに呼び戻されてからは鹿児島一筋だ。カレロHCも「このチームで8年目なので、チームとしても彼がいることで安心感があるし、プレーの面でもハードワーカーで、エナジーを与えてくれる大事な存在」と語るほど、鹿児島における藤田の存在価値は非常に高い。そして、「鹿児島のためにプレーしたいという気持ちが強いか」という問いに、藤田は「もちろんです」と答えている。
「今アカデミーの統括をしている林(亮太)さんが自分をレブナイズに戻してくれて、今日もここに来てくださってたんですけど、もっとしっかりした試合を見せたかったなと思います。自分は鹿児島に8年いて、ここでキャリアを終えたいと思ってますし、でもいつ首を切られるかもわからない。そこはシビアなところですけど、鹿児島に残れるように結果を求めていきたいです」

藤田といえば、その長髪がトレードマーク。本人曰く、当初は「簡単に言えば、ただ髪を伸ばしてただけ」ということだが、ヘアドネーションの存在を知り、それを実行に移したのが4年前。そこから再び髪を伸ばし、今夏には2度目のヘアドネーションを実施した。ヘアドネーションとは、病気などで髪を失った人が着用するウィッグの製作のために頭髪を寄付すること。寄付するのは女性がほとんどという中、3×3チーム・FUKUYAMA BATSの河相智志(元・アースフレンズ東京Zなど)が実施したことはあるが、現役Bリーグ選手では他に例がない。プロアスリートとして社会の役に立ちたいという意識の表れだ。
「必要としてる人がいるということを知ったのがきっかけで、誰かのためになれば嬉しいなと思いました。自分の髪がその後どうなったかは全くわからないんですけど、できることなら続けたいですし、息子に『髪長くしてよ』って言われてるので(笑)、またできればいいなと思ってます。夢を与えるような職業だと思いますし、その相手は子どもでも大人でも、おじいちゃんおばあちゃんでも変わりない。誰からも見られてるという意識を持ちながら、社会貢献もしっかりやっていきたいと思います」
誰かのためにというその意識は、おそらくバスケットによって培われたのだろう。藤田自身、「誰かがミスしても、それを助け合うのがチームスポーツ」と語っている。数字に残りにくいディフェンスに全力を注ぐ藤田の献身的な姿は、B2制覇を目指す鹿児島に欠かすことができない。

文・写真 吉川哲彦











