冒頭に書いた通り、昨シーズンの立川は不本意な結果に終わった。今シーズンはまだ3節しか消化していないとはいえ、4勝2敗という成績はまずまずの数字。フィッツジェラルドも手応えは感じているようだ。
「昨シーズンとの明らかな違いは感じています。昨シーズンの選手が良くなかったということではないんですが、今シーズンはすごく才能のある選手が多くて、試合によって誰が活躍してもおかしくない。その中で、今はチームケミストリーを成長させていかないといけないところでもあるので、お互いのことをもっと知って、シーズンの中盤・終盤に自分たちのピークをもっていければ良いと思います」
初めて日本でプレーしたのは、bjリーグに新規参入した金沢武士団の一員としてシックスマン賞を受賞した2015-16シーズン。つまり、来日して既に10年の月日が経っている。日本のバスケットスタイルにフィットしているのはもちろんのこと、間橋HCが「彼は誰とでも仲良くなれて、選手同士をくっつけてくれる。人間的にも素晴らしいので、とても信頼しているBuddyです」と語るように、その人柄も受け入れられているのだ。
「もう10年もいて、自分の故郷と言ってもおかしくないくらい、この国を気に入っています。人が互いに尊敬し合うカルチャー、日本特有の文化など、好きなところはたくさんある。これからのキャリアも日本でいろんなことを進めていきたいと思いますし、今となっては他の国でプレーすることはあまり考えられません」
外国籍選手の入れ替わりが激しい日本のバスケット界では、10年以上プレーする選手は限られる。その限られた選手の1人であるフィッツジェラルドは、新たに加わった外国籍選手、今シーズンの立川でいえばピークとローカス・ガスティスの指南役となるべき存在だが、それを問うと「ノーノー!」と否定。チームファーストのフィッツジェラルドが先輩風を吹かせるようなことはなく、仲間の存在に最大限の敬意を払う。
「彼らとはお互いに信頼し合って、頼り合ってます。もちろん年齢的には僕が一番上なんですが、みんな同い年くらいの感覚で関わり合っています。2人とも才能のある選手で、彼らのような選手がこのチームには必要だったし、僕も彼らがこのチームに来てくれて嬉しいのと同時に、2人に助けられてもいる。選手としても、それ以外の部分でも互いにヘルプし合っています」
かつてバンビシャス奈良と愛媛オレンジバイキングスでも共闘した間橋HCは、立川のHC就任2シーズン目に「どうしても彼が欲しい」とフロントに懇願したそうだ。「相棒みたいな存在」と語る間橋HCに対し、フィッツジェラルドも「良い関係を築けているんじゃないかと思います。奈良のときも、愛媛のときも僕の人間性を良く理解してくれたし、立川に来ることを決めたのも間橋HCがいるからというのが理由の一つでした。いろんな面で彼には感謝しています」と言い、互いに信頼し合っていることが窺える。
岐阜戦を連勝で終えたGAME2終了後、間橋HCがコート上のインタビューで「ルーキーらしくハッスルしてくれた」と大内淳輝を称賛すると、続けて発表されたゲームMVPのフィッツジェラルドはその大内を連れ立ってインタビューに応じた。仲間を立てるそのマインドが、日本で成功を収めている一番の理由。「まずはプレーオフに進むことが一番近いゴール。プレーオフが始まってからはどうなるかわからないし、いろんなことが起きると思うんですが、今はとにかく週ごとに、月ごとにチームも選手も成長していくことが重要です」と先を見据えるフィッツジェラルドが、立川を一つにまとめて高みに導いていく。
文・写真 吉川哲彦