迎えた第3戦、横浜EXは三度先行し、前半は11点リード。リーグトップのオフェンス力を誇示するように、第4クォーターの32得点で突き放し、レギュラーシーズンの5位から3位にステップアップしてフィニッシュした。この日は東京ユナイテッドの宮田諭と早水将希HCも横浜武道館に駆けつけ、古巣の奮闘を見守った。西山達哉や長谷川凌、田口暖らと長く共闘してきただけでなく、対戦相手の泉秀岳HCもかつてのチームメート。前日は自身のことよりも選手を気遣った石田HCだが、この日ばかりは自身が歩んできた道に想いを馳せ、胸に迫るところもあったようだ。
「宮田さんと早水が試合を見に来てくれて、いろんなことを思い返すような場面もありましたし、西山や泉も一緒にバスケットをやってきた仲なので、そういった仲間と試合ができるのは幸せなことだなと感じました。HCを退任することも自分のためではなく、クラブが前に進む、改めてB2昇格を目指して進むということを示すためでしたし、選手たちもこういった舞台で頭を下げて試合をしてほしくはなくて、そのためにどういうアプローチをしたらいいのかということを考えてきました。ファンの人たちの想いに応えたいと思いましたし、このメンバーとともにHCとしての最後の試合ができたのも何か意味があったんじゃないかなと感じました」
GMとしてクラブに残るとはいえ、6シーズンにわたって務めてきたHC職から離れることは、言うまでもなく大きな変化。試合終了直後というタイミングでも、石田HCにはその実感が既に湧いてきていたようだ。
「肩の荷が下りるという気持ちがあるのは確かです。HCをしていると、寝ても覚めてもバスケットボール。朝起きた瞬間から練習メニューを考えたり、試合直前まで対戦相手の対策をしたり、考えないといけないことが常に頭の中にある生活だったので、その時間から離れることができるというのは少し新鮮ではありますね。もちろん、立場が変わった中で考えないといけないことは多いんですが、『もう次の試合のことを考えなくていいんだ』という実感はあります。ただ、クラブとして次のステップに向かわなくてはならないので、感傷的になる時間はなく、クラブの前面に立つ人間として引っ張っていければと思います」
GM職もまた、重い責任のある立場。その責任を背負い続けるのも、NBDL参入時から在籍している横浜EXに全てを捧げる覚悟と使命感からだ。HCの肩書を外しても、石田剛規という男は横浜EXの顔であり続ける。
「6年間いろんな方から学びながら、選手に助けられながら、試行錯誤してやってきました。今回目標を達成できなかったことは重く受け止めています。ここからB2昇格、B1昇格、日本一を目指すクラブになるために、強い軸となるような人間が必要だと感じましたし、僕がGMになったときに思い描いていたことでもありました。ファンの方に愛されるチームを作りたいですし、見ていてワクワクするような、世界に通用するようなバスケットボールをして、選手をヒーローにして、応援しがいのあるチームにしていければと思います」
文・写真 吉川哲彦