5月8日から10日にかけて行われたB3リーグ3位決定戦は、レギュラーシーズン5位の横浜エクセレンスと同2位のさいたまブロンコスが顔を合わせた。両者ともB2ライセンスは付与されたものの、セミファイナルに敗れた時点で昇格の可能性は消え、モチベーション維持が難しい中での試合。加えて、本来であれば成績上位としてホーム開催しなければならないさいたまが試合会場を確保できず、横浜EXのホームアリーナである横浜武道館での開催。該当週は横浜ビー・コルセアーズのレギュラーシーズン最終節が開催されたため、その翌日からの3日間、月曜から水曜という変則スケジュールだった。異例ずくめの試合となったわけだが、そもそもリーグとしても7シーズン目にして初めてのプレーオフであり、Bリーグ以降では両者とも初のポストシーズンだったことも付け加えておきたい。
横浜EXにとっては、思いがけずホーム開催できたこと以外にも、極めて大きな意味のある試合だった。3位決定戦を前に石田剛規ヘッドコーチが退任し、今シーズンから兼任しているGM業に専念することを発表。これが指揮官としての最後の舞台となったわけである。このタイミングでの発表を本人は悩んだそうだが、選手たちはその発表で退任を知ったらしく、それが選手たちを奮い立たせたという側面もあったのか、第1戦を逆転負けで落としても、同様に先手を取った第2戦は気を緩めず、リードを守りきった。
その第2戦を終えた時点で、石田HCは「昨日、今日と強度の高いゲームができて、両チームの選手をリスペクトしています。昇格のない中でこの頑張りができることは当たり前ではない」と選手たちを称え、こう続けた。
「昨日我々は負けて、泣いてる子どももいれば『勝てるはずだった』と怒って帰るファンもいました。昇格がないとはいえ大事なプレーオフであることには変わりなく、エクセレンスを見に来てくれた人のために強く戦わなくてはいけない、プライドを持って戦おうということを選手たちには伝えました。そういったファンの皆さんの感情も、今シーズン良いバスケットをして魅了してきたからこそ起こるものだと思うので、そこを誇りに思って戦うことができればと思いました」
クラブにとっては、石田HCが選手として現役だったNBDL時代以来のプレーオフ。今在籍している選手は、ポストシーズンの経験の持ち主も決して多くはない。慣れという点でも難しい舞台であり、「プレーオフを意識したスケジュールとか、メンタル的なアプローチとか、いろいろ準備はしてきたんですが、それでも足りなかった部分はありますし、選手の健康状態も含めてピークのコントロールの難しさを実感したプレーオフではあった」と石田HCは吐露するが、「これを体感できたことは、クラブにとって大きな財産。下を向かずに一歩前に進むことを意識して戦えたらと思います」と翌日の最終戦を見据えた。
その一方で、石田HCは指揮官としての寿命が1日伸びたことよりも「選手の体が心配です」と、3連戦という未体験ゾーンに突入したことを憂慮。そして、「今日もどこまで戦えるか不安で、本当に選手が頑張ってくれたことに驚きましたし、プロフェッショナルな仕事をしてくれていることに感謝しています」と選手に寄り添った。