「本当にいろんなことがありましたし、嫌なことも言いました。そんな中でもみんな我慢してついてきてくれて、ここまで来ることができた。みんなの努力のおかげだし、目に見えて変わったと言えるシーズンだったと思うので、これをやめることなく、もっと輝いて、上を目指して頑張ってほしいです。みんなもっと良い選手になれるし、もっと上のステージに立てる。いつか僕も、『あの人に教えてもらった』と言ってもらえるような人になりたいと思います」
あと一歩及ばなかったとはいえ、山口にとって実りの多いシーズンだったことは間違いない。中でも、昨シーズン金沢武士団で震災に遭ったパクは「バスケット以外の問題はなく、練習と試合に集中できた」ことを実感。レギュラーシーズンは52試合中38試合の出場で、10分以上コートに立ったのも9試合しかなかったパクは、この日26分41秒出場で19得点6リバウンド。レギュラーシーズンで2本成功にとどまっていた3ポイントも、この日は4本中3本決めてみせた。
「レギュラーシーズンは出れない時間が多くて、でもその中でチームプレーを理解して、いつ来るかわからないチャンスを待って、今日そのチャンスが来て良かったと思います。正直、3ポイントは入るかわからないです。スタッツを見たら『えっ?』って思われる(笑)。でも、タイムアウトでベンチに戻ったら(栗原)クリスやチームメートが『Good! Good!』って言ってくれるから、良いプレーができるように最後の瞬間までやり続けたいと思いました。今日が最後かもしれないから、後悔しない試合にしたかった」
このシーズンの全ての経験が大きな収穫。同い年の山口力也やキャプテンの川上貴一とともにチームを引っ張り、重冨友希が怪我で戦列を離れた中でガードの責任も背負ってきた吉川は「やっぱり勝つ経験は大きいし、昨日今日は負けたけど自分としては良い経験でした。また来シーズンもプレーオフに来たい」とモチベーションが上がり、大卒1年目を日本で過ごしたプレストンも「今シーズンは神様から与えられたチャンスだった。良い人、良い街に恵まれて感謝の気持ちしかありません。すごく勉強になって、成長できた素晴らしいシーズンでした」と振り返る。そしてパクは「今までのキャリアでナンバー1のシーズン。B3リーグのみんながビックリしたと思います。最後までチームのスローガン『ガチ! ぶちアツ!』ができたから良かったです」と、この1年を心に刻み込んだ。
「ブースターさんの声がだんだん大きくなってきて、本当に助けられました。プレーオフに行かないとわからない空気感は本当に素晴らしいものでしたし、選手はこれからのキャリアでこれを糧にしてほしいです。このクラブはもっといろんな人に見てもらうべきクラブで、これが終わりではなく始まり。もっと良いクラブになるにはブースターさんの力も必要ですし、クラブの人間も成長していかなければならない。今後はプレーオフ出場が当たり前になって、壁を破るチームになっていってもらいたいです」(鮫島HC)
クォーターファイナル敗退から3週間後の5月19日、鮫島HCの退団と鹿児島レブナイズGM兼サポートコーチ就任が発表された。選手として移籍してからの3シーズンで、鮫島HCは多くの置き土産を宇部の地に残していった。その志を受け継ぎ、山口パッツファイブは再び一歩ずつ、力強く前進する。
文・写真 吉川哲彦