ただ、今シーズンはベンチスタートに回ることが多かった中で、第25節GAME1で18得点を挙げると、翌日からの5試合中4試合はスターター出場。東京Z戦は2試合とも2ケタ得点で、特にGAME2のフィールドゴールアテンプトは今シーズン最多の14本。岡山の一員となった当初のマインドを取り戻してきていることが、数字にも表れた。
「今節も含めてこの数試合は、自分の中でも振り切れてるというか、強みを出そうという意識がありました。そうすると何故かプレータイムが増えるという現象が起きてるので、『やっぱりそうだよな』って改めて思いますね。27歳で最初のシーズンに入ったときはすごく楽しくて、とにかくシュートを打って、3ポイントを決めまくるっていう感覚だったんですが、最近はどこかそれを忘れてる部分があって、慎重になってしまうというか、ここは自分で打てるけどパスを回したほうがチーム的にいいよなと思ってしまってました。でも、そういうところに改めて気づけたシーズンではありましたね」
向井がプロキャリアをスタートさせたのがこの岡山。その後3×3チームでもプレーし、在籍は7シーズン目になる。5人制チーム創設時を知る1人として、岡山を強くしたいという想いは「それはやっぱりありますね。代表の中島(聡)から直接連絡をもらってこのチームに入ったんですが、なんとかこの人のために結果を残したいというのがあったので、毎年シーズンが終わったら移籍の話で悩みますが、結局はあの人に恩返ししたいと思って、これだけ長くいさせてもらってるので」と人一倍のものがある。そんな向井は、仲間とともに培ってきたチームカルチャーにも改めて向き合おうとしている。
「抽象的なんですが、プレーの激しさかなと思ってます。今シーズンそれを体現できたかと言われると……比留木(謙司、前GM兼HC)さんがいた頃はちょっとやんちゃというか、毎試合相手を潰しにいくようなスタンスだったんですよ。そこがカルチャーだったはずなんですが、今そういう部分が出るのは本当に劣勢の場面だけ。試合の最初からそれを出すのは難しいかもしれないですが、でもやらないといけない」
残る4試合を全勝しても順位は変わらないが、その4試合は全てホーム。しかも、4月6日は岡田陸人の引退セレモニーも予定されている。勝つべき理由としては十分だ。
「勝ってる姿をファンの皆さんに全然見せられてないのに、それでも観客数がそんなに落ちることなく、たくさんの人が来てくれるので、勝つ姿を見せるのが一番です。岡田はトライフープの5人制ができた初年度からいるメンバーで、最後に残ったのが自分と岡田。そういう思い入れのある選手が引退するので、日曜は本当に負けてはいけないと僕はすごく感じてます。チームとして、勝って盛り上がって送り出したいです」
今や「トライフープといえば向井」と呼ぶべき存在。シーズンは間もなく終わりを迎えるが、岡山の地やクラブに対する想いは、いつまでも向井を奮い立たせる。
「住んで7年になりますが、声をかけられることが年々多くなって、7年間のリアルな街への認知度を体感できてます。自分のキャリアが始まったのがこのチームというのは、今からどこに行こうが変わらない。思い入れのあるチームだからこそ、勝ちたいです」
文・写真 吉川哲彦