チーム合流に際し、トビンがウェルカムの空気を感じたのも、東京Uというクラブのリクルートに対する方針からくるものだ。この点も、宮田の説明がわかりやすい。
「12人がケガせず、良いパフォーマンスが出続けて勝てるならそれがベスト。ただ、勝つ経験がそれぞれのキャリアにもつながるし、人数がどれだけ増えたとしても、彼らのキャリアのプラスになる補強しかしない。あくまでも “補強” なので、チームに足りないものを入れたいだけで、誰かを外して選手を入れるということはしないんです。それは一貫して選手たちに言い続けているので、彼らも自分にとって必要な選手だということを受け入れてくれてると思うし、誰かが来てチームワークが落ちるということは絶対にない。それが、マーカスが感じたウェルカムだと思います。これは、ユナイテッドの一つの文化。B3にいる以上、自分だけが主役になるということはありえない。何かが足りない分、お互いに助け合って這い上がるしか方法はないと思うんです」
新潟とのGAME1でゲームMVPとなったのは、トビンと同じ16得点の川島蓮。千葉J時代にトビンを一躍有名にしたマイクパフォーマンスは、残念ながら見られなかった。しかし、宮田も「期待以上にやってくれてる」というそのプレーを見れば、今後そのチャンスは何度でも訪れるだろう。トビンのモチベーションもかなり高い状態だ。
「MVPじゃなくてもみんなに『ありがとう』って言いたいけど、僕はバスケットの選手だから、頑張ってMVPになったら嬉しい。日本は苦しい人生の人が多いので、そういう人たちを笑顔にするために、プレーもマイクパフォーマンスも頑張る、それが僕の一番だなって思います。みんなが笑顔になるためにもっとプレータイムが必要だなって思うし、上手な選手になるためにこのチームに来ました。いつかジェッツに戻ったら、プレーとジェッツ締めでみんなを笑顔にしたい。いい人生を生きるためにバスケットやってます。
僕のお母さんが言ったことは「こんなにみんな応援してくれるから、いいプレーしなかったら意味ないよ』って。だから、今日『(体に)悪い食事を食べたいな』と思っても、いい食事を食べないと。みんな、僕がいい選手になれることを信じて応援してくれるから」
「いい選手」になる自信も、トビンにはある。ベンチメンバーに求められる役割の一つが、疲弊した相手の体力をさらに削ること。タイムシェア戦略を徹底している東京Uでは、それが特に重視される。エネルギッシュにプレーするトビンにはうってつけの仕事だ。
「スタートの人たちが高いレベルでプレーして、僕が試合に入ったらレベルをキープじゃなくてもっと上げないと。僕はいろんなことができるから、チームに今これが必要だなと思ったら、それをやる。コーチが『リバウンドが欲しい』って言ったら、それは僕がやる。それが、僕がこのチームのためにできることかなって」
せっかくのコメントも多く割愛したが、今回のインタビューは18分以上に及ぶ長さだった。本人によると、「おばあちゃんは1時間2時間ずっと話してるから、僕もそういう感じになっちゃった(笑)」とのことだ。天性の明るさも手伝ったトビンのコミュ力に関して、我々はおばあちゃんに感謝しなければならない。
文・写真 吉川哲彦