熊谷尚也など代表経験者はこれまでもいたが、これからはじまるFIBAアジアカップ予選 Window3メンバーに残れば、A千葉からの代表選出は渡邉が初となる。「スキルがあり、身体能力が高く、身長もあるので今後が本当に楽しみ」と期待を寄せるレマニスヘッドコーチは日本代表でのストレッチ4とは異なり、3番ポジションで才能を開花させたい思いがある。一方、半月以上もチーム練習から離れ、残り少ない特別指定の期間でチームへフィットさせるため、指揮官にとっても「チャレンジになる」と意欲を見せた。
ルーキーの黒川に対しても、「素晴らしい成長をしており、見ていて楽しい選手。常に映像を見返しながらコーチ陣からフィードバックを積極的にもらい、自主練にも励んでいる。それがオンコートのパフォーマンスにもつながっている」とレマニスヘッドコーチは目を細める。特別指定だった昨シーズンからのフィジカル向上により、Bリーグにも適応しはじめた。単に身体を大きくするのではなく、「連動する動きや関節の柔軟性を意識してトレーニングできている」ことで黒川自身もプレーの変化を感じ、きめ細かく対応してくれるトレーナー陣に感謝する。
平均8.2点(2月16日現在)、直近3試合は二桁得点の活躍を見せる黒川だが、得点には固執していない。「アルティーリのスタイルに合わせて自分がアタックできるところをアタックし、良い選手もたくさんいるので、パスをさばけるときにはさばく。バランスを取りながらプレーすることを意識しているだけで、得点を取ることは考えていないです」と自らの役割に徹する。「落ち着いて状況を判断しながらプレーできるようになった」とレマニスヘッドコーチも評価し、23歳の黒川にとってA千葉の環境が成長を助ける。
「ベテラン選手が多く、ルーキーという立場だからこそ、『思いっきりやっていいよ』と常に言ってくれます。シュートが入らなくても『打ち続けろ』という言葉もかけてくれます。失敗しても、取り返してくれる強い信頼関係もあり、先輩たちのおかげで成長できています」
東海大学時代に身につけたハドルを組んで落ち着かせる姿勢も変わらず発揮する。2022-23シーズンにB2へ昇格し、3度目の正直でB1昇格を狙うA千葉にとって、ルーキーの黒川が勢いづけなければならない。得点こそ意識していないが、スタッツに現れる数字を無視しているわけではない。
「例えば、貢献度である+/-(プラスマイナス)のところで、(出場時間で)何点開いたかが大事になります。得点よりも、+/-の項目でインパクトを残すことが今の課題であり、それが役割だと思っています。そこにアジャストすることを、今後も引き続きチャレンジしていきたいです」
黒川は課題として「クォーターの締め方」を挙げ、最後の場面でミスなくリードを保ったり、負けていれば追い上げるための流れを作ったり、チームを勢いづけるための試行錯誤が続く。勝利へ導くポイントガードになるために、黒川にとってもタフゲームが必要だ。残る19試合でトライ&エラーを繰り返しながら自信と責任感を高め、チームの起爆剤として期待が高まる。
文・写真 泉誠一