「降格して苦しい状況で、正直負け癖もついてしまってるところに自分が移籍してきたんですが、チームが一つになって、逆境を跳ね返す力や勝とうという強い気持ちが昨シーズンはあったと思います。今は、今日みたいに点差がついたときに踏ん張れないし、この現状をただ見てしまっているというのがあるので、昨シーズンの主力が抜けたというのは関係ないし、戦術どうこうよりはメンタルの問題だと思ってます」
チームが苦しいシーズンを送る中、ハビエル・カーターが試合中に倒れたことはさらに心を沈ませてしまうことになりかねなかった。3クラブ目の共闘となった前田健滋朗HCが「非常に落ち着いていて、お父さんのような性格。チームがどんな状況でもブレずに進んでいけるのは、彼がいるからだと思ってます」と言うように、チームにとってはかけがえのない存在なのだ。
しかし、その後カーターは無事に回復し、倒れてから半月余りでチーム練習に姿を現すと、川崎戦の3日前に行われたホームゲームにも帯同した。相手が古巣の長崎ヴェルカだったこともあり、元気な姿に多くの人が安堵したことだろう。まだプレーはできなくても、滋賀としてはこれを、前を向く良い材料にしていく必要がある。
「チームもクラブも、ブースターさんも含めて、ハビの元気な姿を見られたのは嬉しいことだと思いますし、そういうポジティブなことをきっかけに、仙台戦2日目に勝ったのはチームが一つになれた感じがします。あの試合が『たまたま勝てた』では意味がない。一つひとつの試合にかける想いをみんなが感じ取れるかどうか、自分がもっと周りを巻き込んでいかないといけないと思います」
1シーズンだけとはいえ山形ワイヴァンズでもチームメートだった田原は、カーターの回復を誰よりも喜んだ。カーターの滋賀加入が決まったときの心境を、田原は今でも鮮明に記憶しているという。だからこそ、カーターがコートに戻るその日までにチームを押し上げたい気持ちはより強まる。
「素直に嬉しかったですし、ハビとまた一緒にやれるというワクワク感をすごく覚えてます。山形のときもめちゃくちゃ仲良かったので、『マジか!』っていうサプライズでしたね。人間性も良いですし、バスケットに対して熱い。自分にとっては太陽みたいな感じなので、こういう試合を見せてしまうと苦しいし、情けない。ハビの分まで頑張らないといけない」
「アウェーにたくさんのブースターさんが来てくれて、自分もLake Upリーダーとして熱い想い、B1にかける想いがありますし、チームとしてどれだけ良くなっていけるかが大事。応援していただいてることに感謝して、明日は勝つ気持ちをもっと前面に出して臨みたいです」と語って翌日のGAME2を迎えると、滋賀は前日と見違えるように気迫あふれるプレーを連発。田原が成功させた3本の3ポイントは全て第4クォーターのもので、残り4分以降の2本はいずれも逆転弾だった。「今日より明日を素晴らしいものに」というLake Upリーダーの理念を、田原は見事なまでに体現してみせたのだ。3点及ばず敗れはしたが、田原の魂のプレーが滋賀を勝利に導く日は必ず訪れるだろう。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE