「勢いに乗っている時間帯はファストブレイクをうまく出せている」
ここ1ヶ月の戦績は8勝3敗。ロネン・ギンズブルグヘッドコーチが目指すトランジションバスケが浸透しはじめてきた。2連勝し、2024年を締めくくった茨城ロボッツ戦から「調子が上がり、トランジションが出せているのもディフェンスが一番の要因である。この1ヶ月間は平均失点もだいぶ抑えられている」と指揮官が言うように、70点台以下に抑える試合は11試合中7回を数える。
今シーズンはイギリス代表のサッシャ・キリヤ・ジョーンズ、元ワシントン・ウィザーズのアリゼ・ジョンソンを新たに迎え、ロスコ・アレンを含めた外国籍選手たちは高さとともに機動力を備える。だからこそ、川崎ブレイブサンダースの新たなトランジションバスケが成立する。11月末から特別指定で加わった米須玲音と山内ジャヘル琉人が試合に出はじめたのも茨城戦からであり、若い2人が川崎を突き上げてもいた。
ディフェンスを成功させ、切り替え早く速攻から得点を決めるファストブレイクポイントは、35試合中22試合で相手を上回った。ファイティングイーグルス名古屋戦から横浜ビー・コルセアーズ戦までの4試合で先発を任された米須は学生時代からスピードには定評があり、いずれもファストブレイクポイントで勝っている。彼が持つタレントがその要因ではないか、とギンズブルグヘッドコーチに問えば、「トランジションは開幕前から目指してきた部分であり、そのスタイルがチームとして浸透しつつある。もちろん米須選手の加入により、トランジションを出せている印象は持っている」とこだわりを持って磨きをかけてきた。米須はトランジションバスケだけではなく、「ハーフコートオフェンスの遂行力も出来はじめている。彼はまだ若く、責任を全て課すわけにはいかない。徐々にこのレベルに順応していけば良い」とギンズブルグヘッドコーチは丁寧にチームへ溶け込ませていた。
新しいバスケスタイルが浸透しはじめているが、まだまだ指揮官を納得させる出来ではない。「トランジションオフェンスの成功率が3割程度であり、もちろん100%成功するのは無理な話だが、5〜6割は決め切ることが大事になる。トランジションを出せていながらシュートを決め切れなかったことも、オフェンスが停滞した理由のひとつである」と指摘した神奈川ダービーは第3クォーターまでリードしていたにも関わらず、逆転負けを喫した。滋賀に大差で勝利した1戦目も同様に、ファストブレイクが出せているからこそ、イージーシュートの決定率向上を求めていた。
「勢いに乗っている時間帯はファストブレイクをうまく出せている。チームの長所であり、しっかりとした武器にしていきたい。それが、私が目指すバスケスタイルでもある。ディフェンスから走ってオフェンスにつなげるのが理想形。そのためにも、さらにディフェンスを良くしていきたい」
「常に危機感を持って競争できている」4人のポイントガード
米須と山内の加入後はロスターが14人に増え、この1ヶ月は必ず誰か2人がベンチから外れる。長いシーズンを戦い抜くために体力を温存させる機会でもあるが、柏倉哲平は間髪入れずに「競争ですね」と厳しい現状を明かした。
今シーズンより滋賀レイクスから移籍してきた柏倉はこれまで28試合に出場し、1月11日のFE名古屋戦まで12試合連続で先発ポイントガードを担う。しかし、翌12日から3試合はベンチから外された。その率直な思いをこう語る。
「ネノ(ギンズブルグヘッドコーチ)は選手のことをよく見ているし、チャンスも与えます。その時に1番調子の良い選手が長く試合に出る。よりチームにポジティブなエネルギーを出している選手が試合に出ており、シンプルなことです。ベンチ外になることはそれなりの理由がありますが、本当に悔しいです」