今シーズンのB3リーグは、首位争いもさることながら、6位以降の順位争いが非常に面白い。勝率5割前後に5クラブがひしめく状況が続き、節を終えるごとに順位が目まぐるしく入れ替わる。プレーオフ進出枠は8つ。そのボーダーラインをまたいだつばぜり合いは、ここから終盤戦にかけてさらに激化していくものと思われる。
第17節には、その当事者同士の興味深い対戦があった。岐阜スゥープスが新潟アルビレックスBBをホームに迎えたカードは、GAME1で42-82という大差がついて新潟が勝利。2シーズン連続で降格してきたとはいえ、五十嵐圭を筆頭に経験豊富な選手が揃うとあって、この結果だけを見ると明らかに地力の差があると感じられても致し方ない。
しかし、翌日の岐阜は全く違う姿を披露した。前半こそ10点ビハインドを背負ったものの、後半に勢いづいた岐阜は試合をひっくり返し、87-83で前日の借りを返した。試合の流れを急激に変えたのが、第3クォーター残り3分を切ろうとしたところで飛び出したあるプレーだった。アント・ネルソンがドリブルでペイントエリアに侵入した直後、他の選手のディフェンスについていた高橋快成が一瞬の隙を突いてボールをスナップ。ルーズボールに高橋が飛びつくと、さらにこぼれたボールに卜部兼慎が飛び込み、最後は新潟の選手が倒れ込みながらボールキープしたものの、体がサイドラインを割ってアウトオブバウンスとなったプレーだ。小林康法ヘッドコーチが「ゲームMVPは違う選手でしたが、彼らのそういう姿がチームに良いエネルギーを与えて、勝利をつかみ取れた」と振り返ったほど、大きなインパクトを与えるハイライトシーンだった。
そのシーンのきっかけを作った高橋は、「昨日と同じように序盤から厳しいゲームになったんですが、粘り強く戦った結果、自分たちに流れを持ってこれて、最後また苦しい状況になってもなんとか我慢できたことが勝利につながったかなと思います」と試合を振り返った。前日との違いについては「メンタリティーの部分で昨日は準備できてなくて、それで相手に先手を取られてしまった。今日は、自分たちがやってきたことは間違ってないんだから、全員がメンタルをしっかり作ってゲームに入ろうということを強調してミーティングをしたので、それぞれが良い準備をして、チーム全員で取った勝利だと思います」と話し、試合に臨む精神面の改善を実感した様子。前半を終えて10点リードを許していても、「気持ちでは負けてない。こういう状況は過去にもあったし、それと同じでとにかく我慢という感じでした」と最後まで精神的に崩れなかったことが最大の勝因だった。
高橋はまだ21歳。マッチアップする時間帯もあった五十嵐とは干支で二回り近く離れており、他にも40歳前後の選手が並び立つ新潟に対して臆する気持ちが出てきてもおかしくないが、「それは僕もなかったですし、チームとしてもなかったと思います。逆に、言い方は良くないですが『次は俺たちがそのポジションを取るんだ』という想いもあるので、尊敬している素晴らしいベテランの選手であっても、コートの中では絶対に負けられない。気持ちの部分は譲れなかった」と頼もしい一面を見せる。