Bリーグにアジア特別枠が設けられて5シーズン目となり、今ではB1だけでなくB2やB3のクラブもその枠を活用するようになってきた。Bリーグが立ち上がった当初と比べると帰化選手は大幅に増えているが、外国籍選手が一朝一夕に日本国籍を取得できるわけではなく、絶対数の限られる帰化選手はまだ争奪戦の傾向がある。各クラブとしても、アジア特別枠選手のほうが獲得に動きやすいという側面はあるだろう。
隣国である韓国からも、アジア特別枠導入初年度の2020-21シーズンに信州ブレイブウォリアーズに加入したヤン ジェミン(現・仙台89ERS)を皮切りに、何人かの選手がBリーグの舞台を踏んでいる。2022-23シーズンに福島ファイヤーボンズでプレーしたチョン・ギボムの高校時代の実話を元に製作され、昨年公開された映画「リバウンド」もBリーグファンの間では話題になったが、「リバウンド」にはチョン・ギボムの高校のチームメートとしてもう1人のBリーガーが登場する。それが、今シーズン山口パッツファイブでプレーしているパク セジンだ。
203センチ・104キロという恵まれた体格を持つパクだが、山口では必ずしも長い出場時間を与えられているわけではない。アスレチック能力の高い外国籍選手とのマッチアップとなると不利になってしまうのは否めないからだ。筆者が取材した12月28日のアースフレンズ東京Z戦も、第2クォーターのオフィシャルタイムアウトを挟んだ1分0秒に出場したのみだった。
ただ、従来から多彩なラインアップを志向している鮫島和人ヘッドコーチは、「正直、ビッグラインアップはめちゃくちゃ使いたい」とパクを外国籍選手2人と同時起用する戦略も持ち、パクがスターターに起用されて外国籍選手2人と並び立った試合も実際にある。パクのパフォーマンス次第で、山口はバリエーションに富んだ戦い方ができるようになるわけだ。その意味では、初のプレーオフ進出を狙う山口のキーマンの1人と言うことができ、その分鮫島HCも期待する。
「僕が彼に求めてるのは、ディフェンスでワンストップする力と、オフェンスでボールを止めないこと。動き続けるバスケットがチームとして目指してるものなので、その中でセジンのスクリーンやリバウンドに期待したいですし、彼には良いシュートタッチもあるので、それをチームとしてうまく生かせるようにしていかないといけないと思います」
1993年生まれのパクは現在31歳。選手兼任の鮫島HCを除くと、山口では最年長選手だ。「1カ月くらい前に韓国からトレーナーを呼んで体重を落としてきてますし、僕と一緒にトレーニングしたり外を走ったりもしてます。取り組み方とかポジティブランゲージの部分は、ベテラン選手としてありがたい存在です」と鮫島HCが言うように、バスケットと向き合う姿勢や人間性の部分は、20代の選手が大半を占める山口にとって貴重なものとなるだろう。