遡ること4年前、2020年のウインターカップ男子は仙台大明成高が東山高を下して3年ぶり6度目の優勝を果たした。最後まで1点を争った名勝負を覚えているバスケットファンも多いだろう。敗れたものの、直後に川崎ブレイブサンダースの特別指定選手となり、プロの舞台でも才能の片鱗をのぞかせた米須玲音のプレーは特に強い印象を残した。
それから4年が経ったということは、当時の高校3年生は今年度に大学を卒業するということであり、日本大に進んだ米須も卒業を間近に控えている。その米須はプロの道を選び、4年前に着た川崎のユニフォームに再び袖を通すこととなった。11月22日、川崎は特別指定選手入団会見を実施。その席で北卓也GMは、4年前に米須を迎え入れた時点で「将来的には川崎の中心選手になってほしいと伝えていた」と語り、「ようやく4年経って、川崎に加入してくれたことを嬉しく思います」と続けた。
その会見には、もう1人の選手が同席していた。大東文化大4年生の山内ジャヘル琉人もまた、4年前のウインターカップ決勝の舞台に立った1人。米須の前に立ちはだかり、仙台大明成高の優勝に大きく貢献した選手だ。米須とともに大会ベスト5にも選ばれた山内も、昨年のインカレ終了後に一旦は特別指定選手として川崎に加わることが発表されていたが、チーム合流前に負傷してしまい、練習生としての活動にとどまっていたという経緯がある。当初から「うちにはドライブができる2番ポジションの日本人選手がいなかったんですが、彼は川崎の選手にない特徴を持っていますし、フィジカルも強くて期待できる選手」と北GMの評価は高く、米須とともに即戦力としての働きが見込める。
この2人の関係は、ウインターカップ決勝で戦った間柄というだけではない。2人とも大学では大ケガを負い、長期離脱を強いられたという点が共通しているのだ。会見では、あのウインターカップ決勝から始まり、今回交わることとなった2人の縁について訊いてみた。
「あのウインターカップ決勝がプロに向けてのスタートラインというか、大会終わりで川崎に入らせてもらって、広い視野でBリーグに対して強い想いを感じられた時期だったなと思います。ジャヘルとは同じ経験をしてきて、お互いをわかり合ってここまできてると思うので、それが川崎で一つになればさらに自分自身も強くなれますし、コミュニケーションを取りながらレベルアップできていくんじゃないかと考えています」(米須)
「ウインターカップ決勝は本当に自分のチームを誇りに思えた試合で、個人としてもバスケットボール人生のターニングポイントになったのかなと思いますし、プロに行きたい気持ちがより強まった試合でもあります。お互いに大学でケガをして、似たような境遇で4年間を過ごしてきて、苦しい想いをする部分もあったんですが、だからこそお互いに感じるものがあると思います。一緒に川崎に入って、高め合える存在だと思います」(山内)
ともにプロ契約で加入した2人は、おそらく12月28日・29日のホームゲームでデビューすることになるだろう。川崎は現在中地区最下位と、痛みを伴う変革期の真っ只中。ケガの苦しみを乗り越えてプロの世界にたどり着いた2人は、チームの救世主となれるか。かつてのライバルが手を取り合い、とどろきアリーナのスターへの階段を上り始める。
文・写真 吉川哲彦