「もともと大学を卒業したら留学したいと思ってたんですが、ちょうど卒業のときにコロナが蔓延して行けなかったんですよ。ドルフィンズを辞めて『何をしようか』となったときに時間があると思ったので、イギリスに行って英語の勉強をしました。だから、ドルフィンズを辞めたこともネガティブにとらえず、『楽しいことを始められるな』と思ってましたね」
帰国した古賀は再びバスケットと向き合うべく、前回在籍時に魅力を感じていた古巣の門を自ら叩き、復帰を願い出た。古賀の実力を知り尽くすクラブが大歓迎したであろうことは想像に難くないが、古賀は一度離れた人間を快く受け入れてくれたことが嬉しかった。
「自分から『スゥープスの力になりたいです』と言って、迎え入れてくれました。8カ月もバスケしてない人がいきなり戻ってきて『やりたい』と言うのも、いくらB3でも考えられないじゃないですか。本当にスゥープスに感謝してますし、なんとか勝たせてあげたいというのが一番強いです」
古賀が感じた岐阜の魅力は、ホームゲームの熱狂的な空間とブースターの温かさ、そして何よりチームの一体感だ。日本人選手はもちろんのこと、外国籍選手もチームファーストで自己犠牲を払える選手を毎シーズン獲得してくるのが岐阜の特徴。そんなチームカラーを、古賀は気に入っているようだ。
「スーパースターはいないんですが、チームになって戦うというのはヤスさんも常に言ってるし、誰かが調子が悪かったら他の誰かが助けて、試合中もこまめにハドルを組もうというチームの雰囲気がある。ファミリー感がすごいというのは毎シーズン感じますし、メンバーが変わってもそれは変わらない。みんな、人が良いんですかね。僕だけの力じゃなく、みんなで1つの勝ちを取ることが楽しいです」
日本人選手が全員アマチュアだったところから始まったものの、徐々にプロ契約の選手を増やすなど、選手の待遇改善に取り組み続けている岐阜は、古賀がチームを離れている間もその努力を重ねてきた。ルーキーイヤーはケーブルテレビ局で仕事をしていたという古賀も、今はその恩恵を受けているところ。プロクラブとしての向上にも自信を持っている。
「経営体制も間違いなく良くなってます。前にいた頃は練習する体育館が毎日違ったり、その度に荷物をみんなで運んだり、アウェーの試合は選手が100キロくらい車を運転して行ったりしてたんですが、今シーズンは空調がついた体育館で練習できるし、アウェーのときも選手がなるべく疲労を溜めないように工夫してくれて、全然違う環境になってきてます」
クラブが環境を整えている分、現場がそれに応えたい想いも必然的に強くなる。クラブ初のプレーオフ進出に向け、古賀は「まだプレーオフに進出したことがなくて、下位のチームに見られるんですが、今年はプレーオフに出る力があると思います。個人としては自分の仕事を遂行することと、常に強い気持ちと感謝を持ってプレーすること、それはずっと思いながらやってます」と意気込む。大資本に頼らず、ゼロから作り上げている岐阜が結果を残せば、リーグ全体にも良い影響があるだろう。クラブとチームが成長していく姿を「僕はやってる側ですが、それを見るのも楽しいです」と言う古賀は、自身のキャリアを導いてくれた岐阜のために全身全霊を傾けていく。
文・写真 吉川哲彦