参入2年目の昨シーズンに続き、今シーズンもプレーオフ進出を狙う湘南ユナイテッドBCにとって、第8節の岩手ビッグブルズ戦はシーズン前半のポイントとなる戦いだった。一昨シーズンに突出した成績でB3制覇を果たし、B2に復帰した岩手は、降格して再びB3に舞い戻ってきたとはいえ、昨シーズンはB2で20勝を挙げたチーム。第7節までの時点では1敗しかしておらず、B2でも越谷アルファーズに次いで2番目に失点が少なかったディフェンス力は健在。湘南にとって難しい相手であることは確かだった。
しかし、そのGAME1で湘南は岩手を1点差で撃破。堀田剛司ヘッドコーチも「最悪2連敗もあるということは頭に入れてたので、初戦に勝ったのは大きい」と安堵の表情を見せた。それでも、同じく接戦となったGAME2は岩手が5点差でリベンジ。足底筋の違和感を訴えたクレイ・マウンスが後半の出場を見合わせた中でも、シェイク・ムボジとエフィ・オディジの2ビッグが機能。23得点を挙げた石川晴道のゲームコントロールが冴え、スターター起用された臼井弘樹の2本の3ポイントも効果的だった。「クレイが出られなくなってチームに動揺はあったんですが、ここまでやれてなかったビッグ2人のラインアップに上手くアジャストできたので、クレイがいなくてもシステムをしっかり構築していけると感じられた」と、鈴木裕紀HCは今後に向けた収穫も得られたという。
1勝1敗の痛み分けに終わったこの第8節は、両HCにとっては思い入れも強いものだった。2人は、湘南工科大学附属高(湘南テック)の同級生。一昨シーズンにも対戦はあったが、岩手がB2に昇格した昨シーズンは対戦がなく、2シーズンぶりの顔合わせ。今回の試合会場となったトッケイセキュリティ平塚総合体育館は、高校時代に何度も試合をした場所であり、高校3年時のインターハイ神奈川県予選決勝もこの体育館だった。
2人の高校時代といえば、ちょうど某国民的人気バスケット漫画が一世を風靡していた頃であり、その舞台は神奈川県。湘南がこの第8節で着用したサードユニフォームは、その主役となっている高校のユニフォームを想起させるものでもあった。名称は明記されていないものの、この体育館もインターハイ県予選の会場として作中に登場したことがあり、特に「この外観が好き」という鈴木HCにとっては、当時を懐かしく思い出す良い機会になった。そこでコーチとして対戦できることに双方が心を躍らせていたのは、特記するまでもない。
「思い出の地で堀田と対戦できたのは、今回こうしてここに来るまでも楽しみにしてましたし、感慨深いです。コーチになってからここに来たことはなかったですし、インターハイ予選の決勝が最後だったので、29年ぶりかな?(笑) だから2つ負けて帰るわけにはいかなかったです」(鈴木HC)
当時の神奈川県の高校男子は、ほぼ湘南テック一強という状況だった。堀田HCと鈴木HCの代は、インターハイベスト4という目覚ましい成績も残している。「できれば僕たちがB2に昇格して対戦するのが理想でしたが、こうしてまた戦えるのは嬉しかったです」という堀田HCは、横浜ビー・コルセアーズ時代などにこの体育館で試合をした経験があるが、ここに鈴木HCを迎えて試合ができることはやはり特別だったようだ。