FE名古屋で3シーズン目の中村は、チームカラーを熟知する。新たに加わった並里成や内尾がガードとして先発を担う今、「成さんから学ぶことはたくさんあり、練習でも試合でもすごい刺激を受けています。内尾とはポジションが少し違いますが、彼もポイントガードに挑戦しているので自分も何か手助けしていきたいです」と共有し、競争しながら切磋琢磨する。12試合を終え、4勝8敗で中地区7位の現状も、「それほど焦りはないです」と中村もまた答えが分かっている。
「良い選手が揃っているので、個人に頼り切るプレーではなくチームとして戦えれば、どこが相手でも良い試合ができることは、昨シーズンも今年の数試合を終えても自信があります」
檄が飛んだ後半は、FE名古屋の方向性を垣間見ることができた。
完璧な前半に見せたサンロッカーズ渋谷の完成形
帰化選手やアジア枠によって、外国籍選手のポジションも多様化する昨今。SR渋谷の司令塔として2年目を迎えたクレモンズはチームケミストリー良く、平均6.8本でアシストランキング2位(11月7日現在)。ヨーロッパでプレーしていたときからルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの目に止まり、「必ずチームの力になってくれる」と昨シーズンからSR渋谷に加入。しかし、Bリーグにおける外国籍ポイントガードが活躍するのは「非常に難しい」と指揮官は危惧していた。
「クレモンズのような外国籍ポイントガードには、必ず相手は大きい選手や屈強な選手をマッチアップさせて潰してくる。それに負けず、簡単にターンオーバーもせずに強く戦い抜かなければならない。相手の対策をかいくぐってオフェンスを遂行できなければ活躍できず、もちろんディフェンスも同様であり、容易ではない」
来日した当初、クレモンズ自身は日本人ガードとのマッチアップに自信を持っていた。しかし、パヴィチェヴィッチヘッドコーチが危惧していたとおり、異なるポジションのマッチアップが続く。ちょうど1年前、バイウィークを迎える頃に、クレモンズもこのままではうまくいかないことに気づき、ヘッドコーチにアドバイスを求めてきた。「一緒に話したことで理解し、選手として成熟できた。そこから戦術理解を落とし込みながら、クリエイティブなバスケを展開できている。それは彼にしかできない大きな特徴だ」とパヴィチェヴィッチヘッドコーチの信頼は厚い。
FE名古屋戦の前半はボールを回し、みんなでつないで次々と得点を挙げていく。ディフェンスでも全員で連携しながら、相手のボールを奪ってイージーシュートを決めた。前半の20分だけで13アシスト(総数19本)、ターンオーバーはゼロ(総数9本)。これが今シーズンのSR渋谷の完成形のように感じた。パヴィチェヴィッチヘッドコーチも、「特に前半は素晴らしい対応ができた」と満足げである。しかし後半に目を向ければ、「相手のディフェンスに対する読みが甘くなってしまい、攻めきれなかったところがあった。このチームはさらなる安定性を求めていかなければいけない」と20分間遂行できたことを倍にしていく。
クレモンズは昨シーズンの終盤に、何度も連勝して追い上げていったチームの良いイメージをベースとする。まだまだ試合での再現性の課題も多い。さらに、水曜ゲームが入って来れば練習ができない。だからこそ、「1試合1試合の中でどれだけ成長できるかを大事にしている。勝ちながら、目指すべきところへ向かって行くことがすごく重要でもある」とクレモンズは意識を高く持ち、イメージどおりのゲームメイクに勤しんでいる。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE