「約2年ぶりにコートに戻らせてもらえてる、それだけでもありがたいことなんですが、長年この世界で生きてきたのは得点能力を買われてのことだったと思ってます。そこでチームに貢献できてないのが自分でももどかしいです。ただ、ケガもあったんですが、開幕を迎えて自分は間違いなく上り調子だと思ってるので、自分の力を信じて、チームを勝たせるために1点でも2点でも得点を積み上げられるような動きができれば、周りを助けることができる。そこは自信を持って取り組みたいし、この2年間バスケがやりたくてもやれなかった、そんな想いもぶつけていくのが今の自分にできるポジティブな面だと思いますので、与えられた環境を思いっきり楽しみながら、必ずチームを良い方向に導きたいと思います」
一昨シーズン終盤にも一度は新潟の一員となっていながら、出場は2試合のみ。2021-22シーズンに西宮(現・神戸)ストークスに在籍した後の2シーズンに関しては、川村自身はブランクと認識している。縁あって新潟に戻ってくることとなったが、まだ感覚を取り戻せていないというのが自身の率直な実感。今は、自身のキャリアを賭けてチームを引っ張り上げることに心血を注ぐ。
「『2年のブランクってデカいんだなあ』って、自分の体が一番感じてます(笑)。ケガしたこともそうだし、シュート感覚もそうですが、特にゲーム感覚ですね。オンプレー中に、自分が今まで決めてきたシュートをなかなか決めきれない。ただ、そういう状況が続いてますが、ゲームに出られることだけでも僕は幸せで、今は自分のパワー、スキル、持っている全てを勝利に直結させられるかっていう次のステップにきてると思います。正直、僕はいつキャリアが終わってもいいと思ってます。それくらい腹をくくってコートに戻ってきてますから、その中で自分ができることを見つけて、今与えられる役割を強度高くやっていって、毎試合ステップアップしていきたい。今は苦しいですが、シーズンが終わったときに自分たちが求めていた結果に結びつくように進んでいきたいです」
コートに戻ってきたことを「腹をくくって」と表現した川村は、自身のブランクの間にB1からB3まで転がり落ちたチームを、自らと重ね合わせてもいる。それはすなわち、新潟の再浮上の一端を担っているという自覚であり、「川村が蘇ればチームも蘇る」と期待している周囲への誓いと受け取っても良いだろう。
「今シーズンのチームスローガンの “覚悟・再生・復権”、それが僕自身にもピッタリ当てはまってるんですよね。覚悟を持ってここに戻ってきてますし、自分を再生させる、復権させる、チームと全く同じ状況だと思ってます。自分が前向きに取り組むことが、間違いなくチームのためになると思ってます。長年同じ環境で戦ってきた圭さんとまたチームメートになって、過去にチームメートだった鵜澤HCがこのチームを指揮してる中で、今は全く力になれてない。でも、彼らの覚悟は日々の練習で感じてますから、そこは僕も追いついていかないといけない。『俺も必ず復権してやろう』と思ってます」
長い現役生活の間にはリーグ制覇も経験し、幾度となくウィニングショットを炸裂させてはメディアに囲まれてきたが、過去2シーズンはインタビューする側に回っていた川村は、「こうやって取材してもらえるのも2年ぶりなので、すごく嬉しいです。ありがとうございます!」と言って会場を後にした。かつての光景がまた見られるようになるのは、チームとして、個人として完全復活を成し遂げたそのときだ。
文・写真 吉川哲彦