【前編】苦しんだ分、成長できたシーズン より続く
「バカ正直で不器用」というのは、自分の性格について語った津屋自身の言葉だが、そこにどうしても付け加えたいひと言がある。『まっすぐ』だ。理由は彼がまだ青森の中学生だったころに遡る。テレビで放送されていた東海大と青山学院大のインカレ決勝を見たとき、東海大のディフェンスの烈しさに鳥肌が立った。その瞬間、「俺は絶対この大学に入る」と決めたのだという。成長したい一心から京都の名門・洛南高校の門を叩き、研鑽の日々を重ねた末、初志貫徹で念願の東海大入りを果たした。
キャプテンとなった4年次はコロナ禍という大敵に苦しみながらも「強い東海大を取り戻す」と声高に宣言。有言実行を貫き、見事チームをインカレ優勝に導いた。
2020年に入団し、2年間在籍した三遠ネオフェニックスではリーグ最下位付近をさまよい続けプロ選手としての厳しさ、苦しさを経験したが「必ずもっと成長してみせる」という信念は揺るがなかった。
そして、サンロッカーズ渋谷に移籍して2年目を迎えた昨シーズンに津屋が掲げた目標は「全力を尽してステップアップする」── 結果は本人が胸を張れるものだったが、その過程で多くの助言を与えてくれたのは田中大貴。かつて見たテレビの中にいた東海大のエースその人だった。バカ正直で不器用な自分が懸命に突き進んできた道が思いがけない世界につながっていくという不思議。いくつものエピソードが教えてくれるのは、津屋が持つ “まっすぐさ” の威力だ。それはバスケット選手として最強の武器かもしれない。
大野HCから言われているのは「打てるシュートは迷わず打て
「大野(篤史)さんが三遠のヘッドコーチになられたのは僕がSR渋谷に移籍した年なのでちょうど入れ替わりになったわけですが、(外から)見ていてもみんな伸び伸びとプレーしているなと感じました。シューターを生かしたプレーをしている印象もあって、ここでなら自分の武器である3ポイントシュートをもっと生かせるんじゃないかと思ったのも移籍を決めた理由の1つです」
パヴィチェヴィッチHCから学んだきめ細かいルールに則ったバスケットには「相手がどこであろうと大崩れしない強さがある」が、大野HCが展開するバスケットには「相手にとってやっかいな臨機応変さがある」と津屋は言う。
「たとえば(三遠では)試合の状況によって選手たちでディフェンススタイルを決めることも多いですし、自分に限って言えば、大野さんから打てると思ったらどんどん打っていけと言われています。最初のころはここで打っていいのかという戸惑いもありましたが、大野さんから『そういった考えは一切捨ててほしい』と言われました。アテンプトを増やして、たとえ5分の0になっても構わないから、自分が打てると思ったら迷わず打てと」
もちろん、これは闇雲にシュートを打てという意味ではない。打つために自分が動いてチャンスをつくる。周りの動きを見てタイミングを計る。さらには自分が動くことで周りを生かす。「考えたら、渋谷のときとはまた違う難しさがあります」と言いながら、津屋の顔はその難しさを楽しんでいるようにも見える。