「遠征時にホテルでミーティングをすると、そこで使うホワイトボードもお金がかかることに驚きました。ホテルに当たり前にあると思っていたので、GMになって予算を見て、あれはビックリしました。ホワイトボードを使わないこともあるので、それはもったいないなと思いました(笑)。現場にいたときは『あれできないのか、これできないのか』っていろいろ注文していました。それはフロントやチームマネージャーが、現場のやりたいこと準備してくれていたんです。今は逆の立場になって、現場が必要なことはできる限りやってあげたいと思います。立場上、『なんでこれが必要なの?』とは訊きますけど(笑)」
Bリーグ発足時も、DeNAに経営権が譲渡された際も、クラブにとっては大きな決断を迫られる大きな節目だったが、今シーズンは北GMにとって在籍30年目の節目というだけでなく、重要な変革のシーズンとなる。12シーズンにわたって大黒柱であり続けたニック・ファジーカスの引退に加え、これまで東芝OBが代々務めてきたHCを初めて外部から、それも外国籍指揮官を招聘したのである。その状況下、「東芝のバスケットボール部のときから培ってきた伝統は守っていかないといけない」とクラブの歴史に敬意を払うのはもちろんのことだが、様々な面で変化のスピードを上げている日本バスケット界全体の流れにも乗り、そこへの貢献も意識する。
「今は新しいものもどんどん出てきているので、それも取り入れていかないといけない。僕らも外国籍HC招聘が初めてなので、どういったものかを見極めていかないといけないですが、我々が目指すバスケットを体現してくれると思ってオファーしたので、ネノコーチ(ロネン・ギンズブルグHC)には期待しています。今まではニック中心でチームを作っていたので、テンポが早くなる回数が少なかったですが、日本のバスケットは速いペースが面白みでもあると思うので、今シーズンはテンポ上げてワクワクする回数が増えたらいいなと思います。ただ、すぐ勝てるかというと簡単ではないことは僕も理解しているので、今シーズンはネノコーチのバスケットの土台を作って、若い選手も試合に出て経験を積んでチームの中心選手になっていけるようにという、新しい川崎を作る段階だと思っています。プロは結果が全てなので、その結果も求めながら勝敗以外のところ、特にファンの皆さんの心が動いて、また会場に来て応援したいと思ってもらえるような、気持ちが表れるプレーや振る舞いも求めていきたいと思います。日本のバスケットが世界で勝つために、平面のバスケットや3ポイントで戦うというところは我々も同じ。残念ながら今は代表選手がいないですが、そこに選ばれるような選手を育てていきたいですね。」