「クラブのフロントスタッフがメディアにも取り上げてもらえるように、一生懸命地道に頑張ってくれていましたし、選手たちもあのビラ配りで全然認知されていないことがわかったので、オフコートの活動も積極的にやってくれました。初年度は優勝できなかったですが強かったし、Bリーグになったことでよりメディアに取り上げられることも多くなって、そういったことが実ってきたと思います。もう一つ大きいのは、日本代表が強くなったことですね。いろんな方々がバスケを見るようになって、面白いと思ってくれて、そこからBリーグ人気にもつながったのかなと。各クラブもいろんな手法を使ってクラブを知ってもらって、徐々に今の状況になってきたと思います。バスケって2時間くらいで終わるし、屋内なので天候にもそこまで影響されない。非日常を体験できるという、試合以外での価値ができてきていると思います。企業スポーツのときはバスケをやっていればという感じで、オフコートのことはあまり力を入れてなかったというのはありましたし、子供たちにクリニックをやって普及とか地域貢献ということは理解できていましたが、自分たちのことを知ってもらおうというようなことは皆無だったので、これがプロクラブなんだということがみんなわかってきたと思います」
2024-25シーズンの開幕を控えた9月8日、JR川崎駅直結の大型商業施設・ラゾーナ川崎での出陣式は、1000人以上が見守る中で開催された。時代の移り変わりを目の当たりにしてきたからこそ、北には感慨もあったようだ。
「当時は東芝の社員、特に選手が所属していた事業所の方々はすごく応援してくれていましたが、全社で知られているかというとそうではなかったです。今は『東芝のために』が『地域のために、川崎のために』に変わって、地域の方々が会場に来てくれるようになったというのが大きな変化だと思います。NBLで優勝したときのお披露目会も『こんなに来てくれるんだ』と思いましたが、出陣式はラゾーナの2階や3階から見てくれる人も多かったので、以前とは違うと思って嬉しかったです」
複合商業施設・ラチッタデッラ内にあるKAWASAKI BRAVE THUNDERS COURTや、8月に新設されたばかりの川崎駅北口のTHE KAWASAKI VISION、そしてB.革新に伴う新アリーナ建設計画など、川崎駅周辺は徐々にブレイブサンダース色が目につくようになってきた。しかしながら、一歩も二歩も先を進んでいるクラブがあることも事実。地域の人口規模を考えれば、川崎にもまだ進化の余地があり、GMとしてフロントと連携し、クラブ全体の発展への意識がより強まっている北も満足はしていない。
「今まではやはり川崎フロンターレ一色の街だったのが、我々も一歩ずついろんなことができてきているなと思います。でも、プレシーズンで宇都宮ブレックスと試合をしたときに、ベンチ裏が黄色一色になるのは相変わらずすごいなと思いました。ああいうのを見るともっと頑張らないといけないと思いますし、魅力のあるチームを作っていかないといけないなと感じています」
バスケット一筋に、川崎一筋に(後編)へ続く
文 吉川哲彦
写真 川崎ブレイブサンダース、吉川哲彦