新体制になり、先発を担う飯田遼はディフェンスの土台があったからこそ、移籍してきた昨シーズンからすぐさまチームにフィットできた。川崎で2年目の飯田から見える変化は、「そんなにいろいろ分かっているつもりはないですが、ニック選手や藤井祐眞選手(現・群馬クレインサンダーズ)という主力が抜けて、今までの川崎と全く変わってしまったかと言われれば、僕はそうではないと思っています。竜青さんと技さん、チームの良い文化を知るベテランがいることで、僕ら若い選手にとってはプラスであり、ありがたいことです。自分たちも変わろうとしているタイミングで、これまでの文化を知る選手がいるといないでは大きく変わってきます。今までの良い部分に、新しい文化を少しずつ積み重ねて行ければ良いと思っています」と旗振り役の存在が大きい。この状況に対して篠山は、「日本代表では(フリオ)ラマスさんやルカ(パヴィチェヴィッチ/現・サンロッカーズ渋谷ヘッドコーチ)の下でプレーし、新鮮さや楽しさは当時から感じていました。ネノさんが言っていることは、そんなに難しいことではないです。簡単なミスやディフェンスの遂行力と強度、リバウンドでのボックスアウトの徹底など戦術以前のところで、今は負けが続いてしまっている。そこを、もっともっと意識を高く持っていかなければいけないです」と川崎の伝統を継承しながら、新たな刺激を楽しんでもいた。
これまで日本代表とは縁のなかった長谷川にとっては、はじめての外国籍ヘッドコーチであり、ゼロから信頼を勝ち取らねばならない。一番大きな変化を感じているはずのベテランだが、「戸惑いとかはなくてチャレンジするしかないだろうな」と受け入れる。川崎の変化はコート上でも見られており、他のチーム同様にペースアップを図っている。数値で表れるペースは、昨シーズンの71.4から75.9へ上がっており、6試合を終えた現時点でB1トップ。「ハーフコートバスケよりも、できるだけ早くボールを前に運んで簡単なオフェンスをクリエイトするのがネノさんからの一番のメッセージ。でも、ただ走っているからディフェンスをしなくて良いわけではない。そこはネノさんも納得できていない部分であり、ヘッドコーチが求めるディフェンスの基準にチーム全員で成長しかしていかなければいけないです」と篠山は攻守に渡って指揮官の意図を汲み、チームを牽引する。長谷川も伝統を継承しながら、新たな基礎作りに勤しんでいる。
「もう練習していくしかない。日々のコミュニケーションやお互いに練習からバチバチにやり合っていけば、自ずとプレーの質やターンオーバーの質も変わってくると思っています。お互いに高め合い、チームとして競争し合って良くしていきたいですが、ちょっとふわふわした時間帯がまだ多いです。もっと緊張感を持って取り組んでいかなければならないです。もちろんメンバーもヘッドコーチも変わって難しいこともありますけど、リーグ戦は60試合もあるので少しずつ理解し合いながら、お互いにリスペクトし合いながら、一歩一歩ステップアップしていきたいです」
長年快適に戦う場を築きあげてきた川崎であり、10年以上在籍するベテランたちが移籍することなくコンフォートゾーンから抜け出す今シーズンの変化こそ注目である。
文・写真 泉誠一