一昨シーズンに光明が見え、昨シーズンに中地区優勝という花が開いた三遠ネオフェニックスにとって、今シーズンはリーグ制覇が手の届くところにあるシーズン。金丸晃輔やコティ・クラーク、サーディ・ラベナらが移籍でチームを去ることとなったが、代わって入ってきたのはNBAで6シーズンプレーした経験を持つデイビッド・ヌワバ、昨夏のワールドカップに続いて今夏のパリオリンピックでも日本代表の主力となった吉井裕鷹、帰化選手として日本のバスケットを知り尽くすウィリアムスニカ、3シーズンぶりに三遠でプレーする津屋一球、将来の日本代表入りが期待される湧川颯斗、そしてかつての日本代表のエースガード柏木真介という錚々たる顔ぶれだ。周囲の期待は否が応でも高まるというものだが、大浦颯太には慢心は微塵もない。
「昨シーズンとは違うスタイルの選手が多く入ってきているので、自分自身も彼らをどうやって使うかを実際にプレーしながら学んでいかないといけないですし、愛知カップで優勝したことは一つ大事なことでもありましたが、シーズン中は何が起きるかわからないので、もっともっと日々成長していかないと優勝はできないと思います。やってみないことには、『昨シーズンより良かった』ということは言えない。まずは1試合1試合、自分たちが何ができるのかを考えて、成長していくことができれば昨シーズンよりも良いシーズンを送れるんじゃないかと思います」
もちろん、大浦の言葉にもあるように、9月に開催された愛知カップで優勝という結果を手にしたことは、三遠にとっては良い成果。本格的なシーズン開幕を見据えた準備段階という位置づけであり、勝利にこだわったわけではなかったが、これまでに積み上げてきたものを再確認することができ、その上で結果が伴ったことに意味があった。
「自分たちが昨シーズンからやってきたことだけで戦ったので、より作戦を練って何かをやろうというのではなかったです。ヤンテ(・メイテン)がいなかったので戦い方は少し違いましたが、特に愛知カップのために何かをやるのではなく、自分たちのバスケットで目の前の試合を戦ったという感じです。ただ、負けていい試合はないので、全力で戦った結果が優勝に結びついたということが、シーズンや天皇杯を戦う前に良い経験になったかなと思います」
柏木と湧川が加わったことで、今シーズンの三遠は山内盛久、佐々木隆成と併せて実に5人のポイントガードが在籍することになる。金丸らが去った分、チーム状況や試合展開に応じて2番ポジションで起用される選手もいるだろうが、司令塔としての出場時間を巡るチーム内の争いが激化することも確かだ。冷静に周囲を見渡し、ときに自身を客観視することもできる大浦は、「スタートで出るとなれば試合に入りやすいというのはありますが、試合の状況を見てベンチから出ていくのも勉強になる。どちらで出ても楽しさはあります」と、スターターへのこだわりはさほど強くない。層の厚くなった中で自身の出場機会の増減に意識を傾けるのではなく、それを自身の成長の材料と受け止め、チームの中で自身がどうあるべきかを考えた上での成長を期し、全員で向上していくことがチームにとってもプラスに働くという思いがある。