しかし昨シーズンの西地区ときたら激戦地帯。
最終節まで決まらない優勝チーム。
CSの上位4分の3を占める勢力図。そして西地区ファイナル。
東高西低と呼ばれたかつては何処へやらといった調子で、盛者の必衰具合もひしひしと肌に感じつつ、ハイレベルなウェスタン混戦模様の先端に到着したのは名古屋ダイヤモンドドルフィンズであった。
ここ数年の運のなさ、受け入れがたさにどっぷりと沈んだシーズンエンド ── どこも似たような事情は抱えているにせよ ── を乗り越えた先の栄冠は、どのような違いからもたらされたものなのかと訊いてみる。
「3年間積み上げてきたものをしっかりと出すことができて、ショーン(デニスHC)さんのバスケットがどういうものなのかをしっかり証明できたことですかね。それと、琉球(ゴールデンキングス)さんにもストレートで、4-0で勝つことができたので、そこがすごく大きかったと思います。2つ前のシーズン(2022-23)のチャンピオンシップで負けて、それまでにも2回、CSの1回戦で琉球さんには負けているので、やっぱり琉球には負けたくないっていう思いが特別強かったっていうのがあるかもしれないですね。」
中東泰斗がいうように、名古屋Dは2022-23シーズン終了時点までに4回ポストシーズンに進出し、そのうちの3回を琉球と対戦、全て敗退している。
この2チームには因縁めいたものがあるのかもしれないなあ、とぼんやり感じていたのは筆者の経歴ゆえかと思っていたが、それだけ負ければ思い入れるのもやむを得ない。
ともあれデニスHCである。
就任以来はっきりとチームのプレーが変化し、スタイルが明確化された印象から、さぞ細部へのこだわりが強い指導者なのだろうと想像していたが、「本当に選手主体でやらせてくれる」とのことだったのでこれにはちょっとばかりたまげる。
「どちらかというと試合中もあまりショーンさんが指示を出すことはなくて、僕たち選手でディフェンスもオフェンスも決めたりするので、自分たちの自主性というか、自分たちで問題を解決する能力がこの3年でついたのかと思います。
トランジションバスケっていうのはベースにあるものの、ディフェンスで前から仕掛けたりチェンジングが増えたり、本当に相手を邪魔するディフェンスが増えて、デニスさんが来てからのここ数年でそれが名古屋のディフェンス、っていう感じになってると思います。」
HCの手配するあれやこれやは発案者の手を離れ、その発揮のすべてが選手の判断に委ねられることの、そこはかとない親心、潔さ。
それは守るばかりでなく攻めるにあたっても同様に、
「要所要所でタイムアウトのときはさすがにショーンさんがコールしますけど、ほとんどはポイントガードがプレーを決めてます。練習中から、目の前のディフェンスの反応を見て起きたことに対応しながらプレーしろ、味方の動きに合わせて動け、っていうことを口すっぱく言われているので、ほとんどが選手主体でプレーしています。」