西山(172cm)や大橋大空(165cm)ら4人いる175cm以下の選手に対し、「一番地面に近い選手たちだからこそ、ルーズボールを拾うことが仕事である。特にキャプテンの大橋には先週の開幕戦(湘南ユナイテッドBCに64-70)で負けたあとに、ポイントガードだからこそ背中で見せれば、それにみんながついていくから」とさらなる激しさを求めた。翌2戦目は見違えるようなディフェンスで初勝利を飾った。ベンチスタートの平良彰吾(170cm)も同様の強度でディフェンスファーストを徹底させる。ホーム開幕戦ではガード陣だけではなく、外国籍選手が床に身を投げ出し、コートサイドで声援を送るファンをクッションにしながら、ルーズボールを追いかけた。その姿に河合ヘッドコーチも目を細める。
「オフェンシブな印象を持たれるチームであり、TB(トレイ・ボイドIII)もオフェンスですごく目立つ選手だが、だいぶディフェンスマインドが芽生えてきた」
昨シーズン途中で去った「ペップの財産もある」と河合ヘッドコーチは続け、ジョゼップ・クラロス・カナルス元ヘッドコーチが蒔いた種を引き継ぎ、芽生えさせた。湘南に勝利した2戦目以降は、いずれも59失点に抑えるディフェンスで2連勝。勝って反省することが、選手たちの自信につながっている。
「愛を持って応援し続けてくれるファンの方々の存在が変わらないもの」増子匠
横浜BUNTAIを多くのファンで埋め、バスケスタイルも大きく舵を切った今シーズンの横浜EX。過去3シーズンで選手やコーチ陣が様変わりし、何より4年前には東京から横浜へ移転した大きな転換期があった。変わらない方が難しいクラブ事情の中でも、「変わらずに応援し続けているファンが多くいます。その方々のおかげであり、その大きさを僕はすごく感じています。僕自身はエクセレンスを変えようと思って移籍してきました。その中において、愛を持って応援し続けてくれるファンの方々の存在が変わらないものであり、そこがこのチームの良いところです」と増子は感謝し、そろそろ恩に報いらねばならない。
これまでのB3リーグは新興勢力がスタートアップの勢いそのままに、昇格を果たしてきた。しかし、今シーズンは新規参入チームがいない。西山は「岐阜もすごく強いチームだと認識して今節に臨んでいましたし、上位チームの実力は拮抗しています。でも、どのチームに対しても、自分たちのやるべきことをやれば勝てるとも思っています」と新たなスタイルを遂行し続けることが求められる。増子にとっても、「移籍してきたときから変わらず、目標は昇格すること。そこは絶対に達成したいですし、そのためならばどんな努力でもしたいと思って今までもやってきましたが、なかなか結果が出ずに来ました。もう点は取れるのは分かっているからこそ、ディフェンスに対して一人ひとりが向き合って、固く守ることさえできれば本当に優勝できるんじゃないかな」と手応えを感じているからこそ、より強固なチームにしていく。
横浜へ移転してきたのと同じ時期に、増子の母校であり、局地的ににぎわいを見せる神奈川大学もみなとみらいキャンパスが誕生した。「神大時代は、幸嶋(謙二)さんに迷惑をかけました。でも、プロになって幸嶋さんが言ってくれていたことがやっと分かった……って、遅いんですけどね。でも、このために言っていたのか、と納得することが多く、幸嶋さんに学んだことはプロになってから本当にためになっています」。横浜EXのホームと同じエリアにあるが、「まだ後輩たちに合わせる顔がない」と増子は感じていた。B2昇格が神奈川大学の敷居をまたぐ大きな一歩となる。
B2も開幕し、今シーズンから昇格した鹿児島レブナイズと福井ブローウィンズが連勝スタートを切った。レベルの差はないに等しく、がけっぷちにいるからこそ進化し続けるB3リーグの熱き戦いを、今シーズンからバスケットLIVEで見られるようになったのも大きな変化である。
文・写真 泉誠一