「いや、声がかかるとかかからないかとか以前に今の自分は代表レベルに達していないと思っています。いろんな面でケガする前にはまだ戻ってないですね。だから、今は自分を早く高いレベルまでプッシュしてその先を見てみたい気持ちが強いです。この数年で痛感したのは良いコンディションを維持するのがいかに大切かということ。Bリーグのインテンシティは年々上がって、試合の烈しさもどんどん増してきています。思い返してみると、ルカに出会ったとき、最初に言われたのはフィジカルの部分。フィジカルにどんどんやれるコンディションを求められました。正直、そこの部分を自分はまだ作りきれていないと思っていて、今はそこを作り直そうと取り組んでいる最中です。コンディションさえ良ければ、自分はまだまだこのリーグでトップの力を示せると思っているので、そこのところは自分を信じて頑張っていくつもりです」
9月3日に誕生日を迎え33歳になった。自分が全力でバスケットをやれる時間はあとどれくらいだろうか?と、ふと考えることもある。だが、そんなときは恩師の陸川章に言われた言葉を思い出すそうだ。「大貴、バスケットは30(歳)過ぎてからがおもしろいんだぞ」
「そのとおりかもしれません。若いときには見えなかったものが見えるようになって、バスケットの深みも知るようになる。それと同時に若いころのギラギラしていた自分を思い出して初心に返ることもできる。結局、何が一番大事かというと、純粋にバスケットが好きだってことで、若いころはそれを全面に出して、なんていうか、ほんとに毎日ギラギラしてプレーしてたと思うんですね。歳を重ねると、あの時代の自分がどこかなつかしいと言うか、自分にとっていい時代だった気がします。でも、今も仲間と一緒になって目標に向かって熱くなれる自分がいて、それはすごくありがたくてうれしいことです。その時間に限りがあることを知った年齢になったからこそ、熱くなれる今を大事にしてバスケットを楽しみたいと思っています」
では、最後の質問。今シーズンの目標はなんですか?
「チームとしてはリーグを通して成長していき、CSの出場権をつかむことが大きな目標になると思います。その先のことは一旦置いといて、まずはCSへの切符ですね。1つの取りこぼしが後に響いてくるのは昨シーズン自分たちが学んだことなので、その経験を踏まえてより強いチームになっていけたらいいなと思っています」
今さっき最後の質問と言ってしまったが、もう一つ聞きたいことがあった。だから、これがほんとに最後の質問。
広い視野でゲームコントロールができ、判断力に優れ、攻守ともにチームに安定感をもたらす選手。今シーズン、私たちは田中大貴に期待していいですか?
「もちろんです!」
間髪入れずに返ってきた答えは短く、迷いなく、びっくりするほど力強かった。
サンロッカーズ渋谷 #13 田中大貴
今季のコートでもう一度自分の力を証明したい
【前編】自分にとってわくわくする道を選択した
【中編】激戦区を勝ち抜くのは至難の業。だが、そのポテンシャルはある
【後編】自分自身を含め全員が成長していけるシーズンを目指す
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE