「どうなんですかね。確かに自分はどこでプレーするかと同じくらい誰とプレーするかが大事だと思っているので、レオや元基と一緒にやれるのは楽しいですし、あいつらと一緒にもっと上に行きたい気持ちはあります。ただ自分たちがいるのはやっぱり勝たなきゃならない世界なので、『優勝しなきゃ意味がない』という話は(SR渋谷に)入るときにレオともちょっとしました。どれだけ善戦しようと、時が経てばみんな準優勝やそれ以下のチームのことなんか忘れちゃいますよね。記憶に残るのは優勝したチームだけ。だからこそ優勝はすばらしいし、チームスポーツにはそれを仲間と分かち合える喜びもあります。その喜びを味わうためにはもっと勝ちに行くチームにならなきゃならない。そのために自分ができることはまだまだあると思っています」
それでは田中が考える “SR渋谷で自分がやるべき仕事” とはどんなことなのだろう。
「それはアルバルクにいたときと変わっていないと思います。自分がコートに出てインパクトを残すことですね。それが自分の1番の仕事です。それとやっぱりリーダー的な役割でしょうか。ケガをしたことで外からリーグの状況を見ることが増えたんですけど、現状としてどのチームもレベルが上がっているし、実際に対戦してみないとわからない部分もあると思うんです。その中で優勝できるのはどんなチームなのかと言えば、みんなが同じ方向を向いてまとまっているチームであり、そこに良いリーダーがいるのは絶対条件だと思っています。うちの場合、それがレオであってもクレモンズであってもいいんですが、自分もまたリーダーの役割を担えるポジションにいるのは確かです。チームの状態が悪いとき、ゲキを飛ばしたり、カツを入れたりするタイプではないですが、発言はします。チーム全体を見渡しても発言に力がある部類の人間だと思っているので、これからもチームがよくなるために言うべきことはどんどん言っていくつもり。そういう役割を全うすることも自分のチャレンジだなって思っています」
それも含め、今シーズンは自分自身に課したもの、得たもの、期待するものも増えたという。
「正直、腰の手術もあってここ数年はパーフェクトなプレーはできていないですが、スポーツ選手にとってケガはどうしても起こり得ることですから、ケガと向き合うことも大事なんだと学びました。ケガをして良かったとは言いませんが、ケガをしてきたことで見えてきたものもあって、今は人生という面では悪くはない経験だったと思える自分がいます。それも1つの成長かもしれません。もちろん、ケガ以前の自分を取り戻す努力はしていますよ。この夏もしっかりトレーニングを積んで新シーズンに備えてきました。現状の話をすれば、ケガ開けで迎えた昨シーズンよりコンディションは間違いなくアップしていて、いい状態でシーズンに臨めそうです。今シーズンはもう一回自分の力を証明したいと思っているし、それがいいモチベーションになっています。自分でこんなことを言うのもあれですが、自分自身がちょっと楽しみなんですよ(笑)」
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE