もちろん、移籍先の川崎も、選手にとってはメリットの多いクラブだ。長崎もいろんな面で充実し、まだ創設4シーズン目とは思えないレベルだが、歴史のある川崎が一歩前を進んでいる部分もあるのは間違いない。
「長崎はどちらかというと、すごく優しいファンしかいないんですよ。川崎も熱いファンがいるのは同じですが、伝統のあるチームなので、厳しいファンの方もいるという印象があります。あと、環境面はやっぱりビッグクラブだなと感じます。練習が終わった後にすぐ食事が取れるとか、そういうサポートの部分はすごいですね」
そんな中で、9月15日に開催された横浜ビー・コルセアーズとのプレシーズンゲームは100-94で勝利。ベンチスタートの小針は7得点2アシストというスタッツを残しているが、宇都宮ブレックスに敗れた前日の試合も併せ、チームとしての手応えは十分にあったという。
「昨日も含めて、自分たちの強みを再確認できたかなと思います。サイズが小さいチームで、どうしてもうまくいかないときに重い展開になると厳しい時間帯が増えると思うんですが、今日の第3クォーター後半みたいにプッシュして速い展開に持ち込めると、ビッグマンもランニングプレーが得意なので、自分たちのペースに持っていける。そこは良かったかなと思います」
長崎でスターターの座を勝ち取った以上、川崎でもスターターを狙いたい気持ちが芽生えるのは自然なことだろう。ただ、まだ若い小針はその前に、ガードとしてレベルアップすることを第一に考える。篠山竜青という良い手本が身近にいれば、その意識は尚のこと高まるというものだ。
「スタートからガンガンペースを上げて勢いをつけたいという気持ちもありますが、竜青さんがコントロールして、僕が出たときにゲームチェンジャーになるというのもこのチームの良さになっていくと思います。もちろんスタートは狙ってますが、そこまでこだわってるわけではなく、僕が出たときに空気がガラッと変わるような、そういう勢いのある選手になりたいです。竜青さんからいろんなものを盗んだり学んだりして、1ランク上のポイントガードになれるように頑張っていきたいです」
古巣の長崎は、今シーズンから新設のハピネスアリーナでホームゲームを開催する。小針にとって幸いなのは、川崎がその長崎戦をアウェーで戦うことだ。組まれているのは来年1月下旬とまだ少し先のことだが、その話を向けると小針はいささかテンションが上がり、その日が待ち遠しい様子だった。それまでに、小針はガードとしてさらに一皮むけていくことだろう。
「移籍が決まったのはオフでしたし、いきなりのことだったのでチームの全員には会えなかったんです。めちゃくちゃ楽しみです。圧倒して勝ちたいですし、あのアリーナで勝ちたいです!」
文・写真 吉川哲彦