そう前向きに考えることができるのは、髙比良自身のマインドによるものでもあるが、チームとして手応えも感じていたからでもある。27勝という数字は、B1昇格クラブとしては同時昇格の佐賀バルーナーズに次ぐ歴代2位。開幕節がそうであったように、上位クラブに土をつけることも多く、ポテンシャルは証明できたのだ。
「優勝した広島(ドラゴンフライズ)さんにも最後は勝って終わりましたし、自分たちのプレーを遂行できた試合は勝てていたので、そこは自信につながりました。60試合という長いシーズンの中で、今日みたいにガードがいなくなったりすることは考えられる。それを言い訳にせず、コートの5人が任された仕事を全うすればしっかり戦えるだけの戦力はあると思うので、まず自分たちにベクトルを向けて、1日1日を大事にしたいと思います」
駆け足でB1まで上り詰めた長崎も、気がつけばクラブ創設時から残る選手は髙比良と狩俣、松本の3人だけになった。チームが変化していく中、それでも “HAS IT” というチームのコンセプトが土台にあることは変わらず、髙比良もこれまで築いてきたものを守っていく必要があると考えている。それがクラブ全体の発展に不可欠であり、その裏には手を取り合ってきた多くの仲間への感謝がある。
「たくさんの選手やスタッフが入れ替わる中で、僕たちはチャンスに恵まれている。4年目になって、ヴェルカがどういうチームなのかをまた新たに表現しないといけないですが、チームの色が変わっても僕たちが今までやってきたことは無駄じゃないですし、今までいた選手やスタッフのおかげでB1で戦えているので、そういう人たちに恩返しできるように責任を持ってプレーしないといけない。ヴェルカがここまで人気が出て最短で昇格できたのも、ただ勝ってきたからということだけが理由ではないので、そこを文化として大事にしながら、新たに来た選手やコーチがそこにいろんなものをプラスしてやっていければと思ってます。今シーズンも応援したいと思える選手やチームにならないといけないし、ただ勝つだけでは意味がない。新しいアリーナが出来て、素晴らしい環境で練習できるのも当たり前ではないし、アリーナや演出のクォリティーに負けないように選手たちがコートで表現して、勝っても負けてもお客さんが『見に来て良かった』と言ってくれる試合をしたいと思ってます」
髙比良はオフコートで外国籍選手を食事に連れ出したり、日本の文化を教えたりというところにも労力を割いている。新加入の日本人の選手やスタッフにとっても、長崎で生活する上では地元出身の髙比良が頼り。本人も「僕のリーダーシップはそこにしかないと思ってます(笑)。全員での食事会をセッティングしたこともありますし、そういったことも1年目から変わらずやっていることで、せっかく長崎に来てくれた選手やスタッフに長崎の街の良いところを知ってもらって、ここでプレーしたいと心の底から思ってもらえるようにと思ってます」と役割を心得ている。長崎ヴェルカにおける髙比良の存在意義は、ここからまだまだ大きくなる。
文・写真 吉川哲彦