B3参入からの最速昇格を果たし、長崎ヴェルカがB1に意気揚々と乗り込んだのが昨シーズンのこと。開幕節で前シーズン準優勝の千葉ジェッツを連破し、序盤は西地区上位に位置したが、その後は故障者の発生などで失速。最終的には27勝33敗という成績で、ターゲットとしていた30勝には届かずにB1デビューシーズンを終えた。
その長崎にとって、今シーズンは転換期だ。事業面でもハピネスアリーナが開業を迎え、拠点が佐世保市から長崎市に移るが、チームとしてもモーディ・マオール新ヘッドコーチを招聘するなど、過去3シーズンからの変化と向き合うことになる。
新体制の初陣となった、9月8日のアルバルク東京とのプレシーズンゲームは、開始から6分弱で9-0のランという会心の立ち上がりだったが、その後はオフェンスでミスが増え、A東京の決定力も上がり、62-76というスコアで黒星を喫した。
「上位のチームに対して受け身になる時間帯があればこういう展開になってしまうと思います。勝つチャンスはいくつもあったと思いますが、課題がまだたくさんあるなと思いました。一方で、コーチも代わってシステムも変わりましたし、まだそこまで練習もできてないので、シーズンが始まるまでに調整して、アルバルクさんにはシーズンで借りを返したいと思いますし、チームも個人もステップアップすれば可能性は大いにあると思います。次の練習からしっかり準備して、良いシーズンを迎えられるように頑張りたいと思います」
こう振り返るのは、過去の3シーズン全てキャプテンを務めた髙比良寛治。ベンチスタートながら24分39秒出場し、日本代表としてパリオリンピックに出場したテーブス海とのマッチアップなどで持ち味を発揮したが、ガードのマーク・スミスが欠場した上、試合の序盤で狩俣昌也が負傷し、その後大事を取ったこともあって、髙比良がハンドラーを務める姿も見られた。チームの不測の事態に対応し、慣れない仕事もそつなくこなすことができたが、自身としては本来の役割を全うできなかったという反省のほうが強い。
「流れを作るのが自分の仕事だと思ってるんですが、今日は僕と(松本健児)リオンのファウルがかさんでアグレッシブなディフェンスができなくなって、全然満足してないので、次の試合でステップアップできるようにやっていきたいと思います。
僕はやることをずっと変えてないです。練習からハードワークして、呼ばれたときにいつでも100%を出せるようにする、託された仕事を全うするのが自分の仕事。そこは昨シーズンよりシンプルになってるので、自分の良さを出しながらチームに良い影響を与えていけば、その先に何か違うロールも出てくるのかなと思います。まずは今の自分のロールを果たして、その内容と質にこだわっていきたいです」
B1で戦うことは、クラブ全体も、そして髙比良自身も待ち望んでいたものだったが、チーム以上に髙比良はもがき苦しんだ。ただ、夢見ていた舞台で思うように出場機会を得られなかった現実も「必要な壁だった」と受け止める強さが髙比良にはある。
「本当に悔しい想いもたくさんしました。でも、コートに立ったときは自分らしさを出せたとも思いますし、成長するのに必要な壁だったと思います。チームとしても初めてのB1で壁にぶち当たって、それがあったからこそ今ハングリーな状態でシーズンを迎えようとしてるので、良い準備ができていると思いますし、見ている皆さんを良い意味で裏切れるように、これがヴェルカだ、これが自分だというのを示していきたいと思います」