優勝を経験した若いチームにとって試練の新シーズン
昨シーズンのBリーグを制した広島ドラゴンフライズが、プレシーズンゲームに登場。新たにチャンピオンチームを率いる朝山正悟ヘッドコーチは「この試合に照準を合わせてきたわけではない」と笑顔で述べたとおり、結果はあまり意味がない。新シーズンへ向け、課題を見つけて修正していく時期である。
昨シーズン、1試合平均37.8本のリバウンドは24チーム中12番目、ディフェンスリバウンドだけを抜き出せば平均26本で18位まで順位が下がる。この試合の総数は35本、うちディフェンスリバウンドが24本と昨シーズンの平均値より低かった。アルバルク東京に59本(ディフェンスリバウンド38本)と圧倒され、「練習の中では実践できていたが、相手の強力なリバウンドの前に為す術なくやられてしまった。そこから全体的な強度が下がり、メンタルでもだいぶやられてしまい、普段は決めているシュートが入らず、リズムもつかめない試合になってしまった」と朝山ヘッドコーチが振り返った試合は、50-98でホームのA東京に大敗を喫した。しかし、朝山ヘッドコーチの表情は明るい。
「昨シーズンはプレータイムがあまりなかった選手たちが、このオフに取り組んできたことをしっかりと出そうとしてくれたところは素直に良かった」と評価する。広島は先発ポイントガードの中村拓人をはじめ、23歳以下の選手が6人と半分近くおり、とても若いチームである。優勝経験がそんな彼らをどう変化させたのか、アイシン(現シーホース三河)時代に初優勝した自らの経験をもとに、朝山ヘッドコーチは期待と不安を抱いていた。
「もちろん自信につながるものだが、優勝を成し遂げたタイミングが彼らにとっては早すぎたと思う。だから、今シーズンはいろんな壁にぶち当たると思っている。相手に対策され、自分自身がどう見られているかがどうしても気になる。今はいろんなことに向き合いながら、一生懸命日々の練習へ取り組む姿を見ていても、本当にたいしたものである。でも、出鼻をくじかれるようなタイミングが早ければ早いほどいいなと今は思っている。練習でも少しフワッとしたところがあったが、今日の試合のおかげでガラッと変わると期待もしている。優勝を経験したからこそ難しいシーズンになるが、彼らにとってはすべての学びが、本当の意味でプロとしてのキャリアがここからスタートする。今後の成長につながるという意味でも、すごく楽しみにしている」
新ヘッドコーチも選手もチャンピオンという慢心はなく、チャレンジャーとして新シーズンを迎える準備ができていた。ポジティブなエネルギーで2連覇へ向けた挑戦がはじまる。
選手としても人間的にも大きく成長できたオリンピック
「出だしから素晴らしいディフェンスで一気に流れを持って行った。選手を入れ替えながらもみんなの良いエネルギーが溢れ、すべてにおいて良い印象しかなかった」とA東京のデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは48点差の快勝に、文句のつけようがない内容だった。
23本のアシスト数にチームの好調さが見て取れる。昨シーズンから新たに迎えたのは大倉颯太と、出戻りの菊地祥平のみ。「チームケミストリーの良さは、昨シーズンからメインの選手がほとんど変わっていないのが理由のひとつ。選手1人ひとりが深く信じあい、芯からチームの和を広げていく。気持ちが溢れるプレーヤーばかりであり、それに伴ってモチベーションの高い練習から試合に入ることができ、アシスト数が伸びた」とアドマイティスヘッドコーチはその理由を挙げる。シュートを決めることで数字がつくアシストだからこそ、「お互いが信じ合い、ボールをシェアしてオフェンスができた結果である」と開幕1ヶ月以上前から成熟したチームプレーが盤石な武器となる。