まだ現役引退と決まったわけではないが、クラブがB3リーグを退会するとあって、國分にとってもこのオールスターは一つの節目となった。WESTはこの試合の最初のオフェンスポゼッションで、國分に3ポイントを打たせるセットをデザイン。1本目は外してしまったものの、チームメートの2度のオフェンスリバウンドの後に打った2本目は成功し、チームの初得点を決めてみせた。「実戦形式からは離れてたんですが、改めて『バスケットっていいな』と思える瞬間でしたね。ホッとしました」と振り返り、「プレーヤーを続けられるのであっても、プレーを続けないという選択肢になっても、地域や社会にバスケットボールの素晴らしさを伝えられるような活動をしていきたい」と意欲ものぞかせた。さらには、「皆さんのことはずっと知ってるんで、インスタも見てますし、“いいね” も押しますし(笑)、どこに行っても応援してます」と同席した選手たちへのエールも忘れなかった。
そして、46歳の宮田が初開催のB3オールスターに相応しい選手であることは言うまでもない。EASTキャプテンとしての雰囲気作りについて問われると「全く意識してないです。今日はみんなが、与えられた役割を理解してここに来たと思う。スタッフや運営、応援してくださるファンの人も含めて、みんなでゲームを作ろうねという仲間。その中に入れてもらえて楽しかったです」と、オールスターを純粋に楽しんだことを強調した。誰よりも経験豊富で、バスケットボールの持つ価値やプロリーグ・クラブの存在意義を知り尽くし、プレーから離れられないほど愛着を持つからこそ出てくる言葉だ。
このオールスターが大成功だったことを明確に示した要素はたくさんあるが、その一つが後輩たちによる宮田イジりだ。「B1との明らかな違いはありますが、個人能力は劣らない。一番印象にあるのは、みんなバスケットが好きで、純粋に勝ちたい、上手くなりたいと思ってプレーしてること」と真剣な表情でB3リーグの良さを語っていたはずの細谷が、「宮田さんがボールを持ったらプレッシャーかけて、何がなんでも取りにいこうって、それで一致団結した。言い出したのは宮﨑さんです(笑)」と急に方向転換したところからプレスルームの空気が一変。取材の最後には、「今日は絶対宮田さんがうるさいと思ったんで、それに負けないようにしました」(伊藤)、「どうやって宮田さんからスティールするかしか考えてなかったです」(細谷)、「宮田さんだけには絶対に点を取られたくなかった」(宮﨑)と宮田が集中砲火を浴びた。苦笑いしながらツッコミを入れる宮田の姿もまた、今回のオールスターを選手たちがいかに楽しんだかを物語る。
初めてオールスターで指揮を執り、「NBAみたいなのはやめよう。ある程度ガチでやって、お客さんにも楽しんでもらうのがチャリティーの意味」と選手たちに告げたというEAST・三木力雄ヘッドコーチ(金沢、その後退任)も、「能力のある選手ばかりでいいですよね(笑)」と試合を楽しみ、そして「今日負けたとしても、内容には満足してます。『B3もこんなに面白いじゃないか』とお客さんも思ってくれたと思う」とこのオールスターの意義を説いた。競技レベルではB1やB2に敵わなくても、B3にだってバスケットの面白さは十分すぎるほど詰まっているし、それを伝える術も持っているということを、今回のオールスターは証明したのだ。来シーズンもやりませんか、B3リーグの皆さん。
文・写真 吉川哲彦