初年度の2016-17シーズン以来、B3リーグを見る機会が比較的多い筆者は、B3が初めてオールスターを開催すると知って取材を即断した。B1やB2とは少々異なるメンタリティーを持ったB3の選手たちが、シーズン中とは違った空間で、しかも即席チームでどのような雰囲気を作り出してくれるのか、それを見てみたかったのである。
そんなわけで5月25日、エンターテイメント満載のWリーグオールスターが3週間前に開催されたばかりの豊田合成記念体育館エントリオに再び足を運んだ次第だが、結果からお伝えすると90-89、わずか1点差でEASTの勝利。得点ラッシュになりがちなBリーグのオールスターでは考えにくいスコアであり、随所にパフォーマンスを披露しつつ、ある程度勝負にもこだわった点ではWリーグに近い。
元日に能登半島で発生した大地震が開催のきっかけだったということと、豊田合成スコーピオンズが今シーズン限りでリーグを退会するということを受け、金沢武士団と豊田合成から4人ずつ、その他のクラブからは1人ずつの選出となったのだが、各クラブで最も活躍した選手というよりは、ファン・ブースターが見たいであろう選手、各クラブを象徴する選手が選ばれたという印象が強い。その代表例はMVPを受賞した大金広弥(東京八王子ビートレインズ)だが、その他の選手も多士済々。事前のファン投票がなかった分、リーグとクラブが調整して入念に人選したであろうことは推して知るべしだ。
どの選手にもサイドストーリーがあるはずで、筆者としてはできる限り多くの選手を取材したかったのだが、実際にはそうもいかない。それでも、今回はリーグの協力で6人もの選手が取材に応じてくれた。スケジュールとの兼ね合いもあり、6人同時という異例の形での取材となったが、メディア側の人間としてはこれもまた貴重な機会だった。
なお、その6人とは宮田諭(東京ユナイテッドバスケットボールクラブ)、伊藤良太(しながわシティバスケットボールクラブ)、玉田博人(湘南ユナイテッドBC)、細谷将司(福井ブローウィンズ)、宮﨑恭行(ヴィアティン三重)、國分大輔(豊田合成)。B3でのプレー歴も長い伊藤は1年のブランクを経て復帰し、ベスト5に選出。宮﨑も一度は表明した引退を撤回してB3に転じ、38歳にして好成績を収めた。細谷は7シーズンにわたってB1でプレーしてきた実力を見せつけ、堂々のシーズンMVP。いずれも1試合平均2ケタ得点をクリアするなど、今シーズンのB3を語る上では欠かすことのできない3人だ。
一昨シーズンまでの2シーズンを金沢の一員として過ごした玉田に関しては、今シーズン限りでの現役引退を表明しており、これが選手としての最後の晴れ姿だった。鹿児島レブナイズ時代から数えて、B3では7シーズンプレー。初開催のオールスターに出場できたことを喜ぶと同時に、「良いときばかりではなくて、勝てないときも苦しいときも多かったんですが、チームメートやブースターさんに支えられて、率直に感謝の一言に尽きます」とこれまでのキャリアを振り返った。今後については、「どういう形になるかはわかりませんが、若い世代の育成に携わっていけたら」ということだ。