「3ポイントだけじゃ伸びないし、練習ではいろいろチャレンジもしてるので、それをもっと出していけるようにしたいです。チームからの期待というよりは、責任のほうが大きいと思うので、試合に出たらディフェンスをハードにやらないといけないし、それをやることによってチームにもプラスになるし、僕にとっても経験値として備わってくる。本当に今チャンスなので、いただいたチャンスをものにしたいという気持ちでプレーしてます。
開幕から20%くらい終わったときに、このままだとただ3ポイントが打てるだけのビッグマンで終わると思いました。昨シーズンは試合に出られなかったから、無駄にしたわけではないですけどあの1年はもったいなかったし、それで試合に出られるチームに来たのに、レベルアップがないと何のために来たのかという話になる。そこから積極的になってきたし、チームのためにも成長しなきゃいけないという責任が今は強いですね」
それから3カ月余りが経ち、井上はB2ファイナルという大舞台で躍動。第1戦には3連続でオフェンスリバウンドを奪い、その最後を自らの得点で締めるという場面もあった。井上のプレーは何度となくチームを勢いづけた。
「4番ポジションを日本人がやるのはやっぱり大変なんですが、この1年間、毎日ワークアウトもトレーニングもして、どんどん良くなっていきました。宗一郎は、ダメなときでも『次は頑張ります』っていうポジティブさが良いなって僕は思ってるんです。まだまだ伸びるし、伸びなきゃいけない。ちょっと休んだら、またそこから準備を始めてほしいです」(安齋HC)
「最初はそこまで調子も上がらなかったし、いろいろ苦戦したこともあったんですが、去年の1年間に比べたら得るものは何倍もあって、B2優勝はできなかったですがB1昇格は達成できた。自分の人生はこれからまだまだありますが、本当に良い経験をさせてもらったと思います。シュートを決めても決めなくても、試合に出ること自体が楽しくて、その中で学べることもある。バスケットが本当に好きなので、その好きなことを仕事にさせていただいてるということに関して、幸せなシーズンだったなと思います」(井上)
この日は敗れてしまったため、井上の口からは反省の弁も出てきた。それはやはり、チームに対する責任を負っているという自覚からだが、それをポジティブな方向に切り替えることもできるのは安齋HCが指摘した通りだ。
「中心選手がいないということで『自分がやるしかない』と思ったんですが、まだまだだったなと思います。ディフェンスも開幕の頃よりは伸びてると思うんですが、及第点にはいかない。僕のところでやられてしまって、こういう結果になったのも自分のせいだと思いますが、ファイナルまでこういう経験ができるのも良いことだと思います。またこれを糧にして、次につなげていきたいと思います」
来シーズンの契約の話はまだ明らかになっていない(記事公開直後に来シーズンの契約継続が発表された)が、「B1でプレーするのはチャレンジ。楽しみながらやっていけたらと思います」と早くも決意は強い。チームの主力の一角となってB1の舞台に戻る井上は、この先どのような姿を見せてくれるだろうか。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE