84-77で勝利し、1勝1敗に追いついた。勝負の第3戦、1ゴール差が頻繁に入れ替わる。後半開始間際、名古屋Dは司令塔の齋藤拓実がケガによるアクシデントが襲う。代わって、中東がポイントガードを務める。ゲームをコントロールしながら、本来の役割である3ポイントシュートを決め、60-59とリードして第3クォーターを終えた。最終クォーター、広島の山崎稜が3ポイントシュートを決め、60-62。すぐさま中東が決め返し、同点。その後も同点まで追いつくが、山崎とドウェイン・エバンスの長距離砲で広島に突き放される。73-79で敗れた名古屋Dの今シーズンが終わった。
名古屋Dで培ったベースを自信に「コートに出たら自分の仕事をやるだけ」
名古屋Dひと筋10年の中東は、最終戦でポイントガードを任され、多岐に渡る活躍を見せた。セミファイナル初戦は9試合ぶりに先発に戻り、翌日は「控えから出たときの方が、流れが良い」とデニスヘッドコーチはふたたびシックスマンとして起用。2戦目は期待に応える活躍で勝利し、敗れた3戦目も中東がいたからこそ最後までもつれる接戦ができた。どのポジションでも、どんなタイミングでも「コートに出たら自分の仕事をやるだけ」と話す中東は、名古屋Dで培われたベースが揺るぎない自信にもなっていた。西地区を制し、セミファイナルまで勝ち進んだチームの変化を、長年在籍する中東はこう考える。
「ダメな時間帯でも自分たちでコミュニケーションを取って、良い方向に変えていく。そういうポジティブな声かけが、ショーンさん体制に変わってからすごく増えてきたと感じます」
6月13日に17歳の誕生日を迎えるチーム最年少の若野瑛太は、ユースチームでは率先して前向きなコミュニケーションを体現する。チームカルチャーは脈々と根付いており、未来は明るい。未開の地に足を踏み入れた1シーズンを「誇りに思う。この3年間でクラブ全体が向上していることも実感できた」とデニスヘッドコーチは総括し、この悔しさも今後へ向けた糧となる。
名古屋城駅から金シャチ横町の誘惑を抜け、ドルフィンズアリーナを目指す先には2万人収容の新アリーナの建設が進んでいた。未来の本拠地の大きさに見合う第一歩を踏み出した。オフシーズンを迎えるここから先は、ファイナル経験ある梶山GMの出番である。
文・写真 泉誠一