そしてまた、その金久保自身もチームのために強い気持ちで戦い続けた。充実した環境とは言えない中、コーチ不在によって選手たちは本来の役割ではない仕事に手間を割き、ようやく指揮官を迎えようかというタイミングで震災に見舞われた。しかし、関係者の尽力や地域の理解などでリーグ戦に復帰することができた。選手たちは感謝の気持ちを胸に、どんな状況であろうと、勝利を目指して一生懸命にプレーする姿勢だけは失わなかった。
「震災があったからとか、コーチがいなかったからとかではないですし、今日も外国人が出られなかったからこの点差になったとは思ってないです。僕たちにできることはもっとたくさんあった。プレーするからには勝つつもりですし、今日も勝てると思って試合に臨んだので、逆境だったからではなく単純に僕らのプレーが良くなかっただけだと思います。第2クォーターにカムバックできましたが、第2クォーターにできるなら第1クォーターもやらなきゃいけない。コントロールできないことにフォーカスしても何も生まれないし、バスケットをさせてもらえてる以上、こういう環境もネガティブにはとらえてないです。チームは誰も何も言い訳してないし、目の前のことに全力を尽くすということはできてると思います」
2試合とも、試合後には観客をコートに招き入れて記念撮影を行った。第2戦に関しては、テーブルオフィシャルの向かいのエリアに他チームのファン・ブースターがそれぞれユニフォームやTシャツ、タオルを持ち寄った。そこにはB3はもちろんのこと、B1やB2、さらにはWリーグのものまで飾られていた。日本のトップリーグはファン・ブースターの支えがあって成り立っているということを物語る光景を目の当たりにして、「こんなことないですよね。時代の変化も大いに感じます」と語ったのは、企業スポーツの時代を生きてきた三木HC。その会場が、三木HCが「聖地」と称する代々木だったことにも、きっと何かしらの意味があったのだろう。
既にシーズンは終わり、残すは初開催のオールスターのみ。クラブからは自由交渉選手リスト公示のリリースも出始めており、久保拓斗と金久保、ボヤルキムはオールスターが金沢の一員としての最後の試合になる可能性もある。能登地方の復旧も遅々として進まない中、それでもクラブは歩みを止めることなく前進していかなければならない。来シーズンの金沢武士団がどのような布陣になるか、それがわかるのは少し先の話だが、Bリーグの一クラブとして、そして地域の活力として、どんなときでも戦う集団であり続けることを期待する。
金沢武士団
言い訳せず、ただ勝利を目指して
前編・GAME1 https://bbspirits.com/bleague/b24051001kga/
後編・GAME2 https://bbspirits.com/bleague/b24051002kgb/
文・写真 吉川哲彦