今シーズンのB1は、チャンピオンシップ進出を巡る争いが例年以上に白熱。第34節を終えた時点では、既に5チームが進出を決めている一方、残る3枠には7チームが絡んでいた。その中で、第35節に最も注目されたのは31勝25敗の川崎ブレイブサンダースと、それを1勝上回るサンロッカーズ渋谷の直接対決だ。ニック・ファジーカスにとって最後のとどろきアリーナでの試合という大きなトピックもあるが、両チームにとっての天王山という色合いがそれ以上に濃い。ワイルドカードの枠を争っているだけでなく、中地区2位のシーホース三河を逆転し得る位置にもつけているが、その三河や広島ドラゴンフライズ、千葉ジェッツの結果によってはこの第35節に争いから脱落してしまう可能性もあり、とにかく勝利が求められる状況だった。
言うに及ばず、試合は大熱戦となった。第2クォーターに川崎がディフェンスで主導権を握ると、第3クォーター残り3分8秒には篠山竜青のシグニチャームーブである “神の左手” が降臨し、この時点で川崎が最大13点リードを奪ったものの、第4クォーターはSR渋谷が徐々に点差を詰め、残り35秒で1点差。長谷川技がタフショットの3ポイントを決めても、ジョシュ・ホーキンソンが残り8秒で3ポイントを入れ返して再び1点差となったが、SR渋谷の猛追もそこまで。際どい勝負をギリギリで逃げきる格好となった川崎は、SR渋谷と勝率で並び、対戦成績を2勝1敗としたことで中地区3位に浮上し、島根スサノオマジックの敗戦を受けてワイルドカードでも3位となった。
この試合のチーム最多得点は18得点のジョーダン・ヒース。208センチの長身を生かし、過去に2度ブロックショットのタイトルを獲っているリムプロテクターだが、オフェンス面では3ポイントシューターの側面も持ち、川崎の一員となった2019-20シーズンは47.1%という高確率で、1位とはわずか0.1%差のランキング2位だった。この試合も6本中4本を成功させ、そのシュート力がチームを勢いづけた。
昨シーズンはCSクォーターファイナル第1戦で負傷し、第2戦を欠場するなど故障に悩まされるシーズンを送ったヒースは、今シーズンも2月から3月にかけてインジュアリーリストに入り、一時戦線離脱。現時点で13試合に欠場し、3ポイント成功率も30%を切っている。これまで早い時期にCS出場を決めていた川崎にとって難しいシーズンとなっている中、ヒース自身も苦労の多いシーズンとなっている。
ヒースが川崎にとってどれほど重要な存在であるかという点は、佐藤賢次ヘッドコーチの言葉からも窺い知ることができる。HC就任初年度にチームに迎え入れ、5シーズンにわたってともに戦っているという事実を考えると、その言葉はより説得力を増す。
「彼はどんな状況でも常に100%ハードワークするメンタルを持っていて、我々がターンオーバーしてしまって相手の速攻になったとき、間に合わないなと思っても絶対に全力でディフェンスに戻ってるし、オフェンスが始まったら常に先頭を走って、ディフェンスを寄せてズレを作って、そういう数字につながらない仕事をずっとやれる選手。それが、チームにとってすごく助けになってます」