湧川本人に改めて高卒プロとしての決断について問うと、明確な目標があったことを理由に挙げた。
「大学には大学の良さがあると思うんですけど、自分の目標がA代表のポイントガードになるというところから逆算して考えたら、大学の4年間よりも、高校卒業してすぐに代表選手がいるようなリーグでやることが、成長速度を上げてくれると思いました。迷いもしたし、親からも少し反対はされたんですけど、自分の目標をしっかり持てていたので」
ゴメスHCもフィジカル面の進化を挙げているが、湧川自身もプロを選択したことによる成長速度の加速は実感しているところだ。高卒の選手が最初から何もかも上手くいくわけではないが、その中でも自身の持ち味を発揮できていると感じている部分もあり、自身の決断は確信に変わっている。
「レイクスに入って、フィジカルの部分は一番の課題だなと思ったんですけど、スピードやドライブは通用してるなと思います。SNSとかで同じ学年の選手を見ると、自分はレイクスに入ってからの体の大きさとか、スキルの部分も成長スピードが速いなと感じました。去年は(テーブス)海さんがいて、今はキーファーとか、いろんなタイプのガードがいるので、いろいろとアドバイスも貰って良い刺激になってます」
現在は個人的に教師をつけて英会話も勉強中。「高校までは全く喋れなかった」というが、バスケット用語がほとんど英語ということもあり、「聞き取りとか、簡単な言葉だけで伝えるのはできてる感じです」とゴメスHCや外国籍選手とのコミュニケーションの面も特に問題なくできているということだ。
目標が代表入りという観点で考えると、チームメートに川真田紘也がいるとはいえ、やはりB1でプレーし、代表クラスの選手たちと対峙することがより成長を促す。「プレーオフに向けて引き締まった試合や練習ができてる。B1に戻りたいというのがみんなに共通してると思うので、そこを一番に考えてバスケットできてると思います」とムードの高まりを感じている湧川は、「昇格する自信はあります。ペイントアタックとか、アグレッシブなディフェンスでチームのプラスになれるのかなと思ってます」と直近の大きな目標も明確に視界にとらえている。
まだ20歳の誕生日を迎えていない湧川は、プロアスリートとしての大切な仕事の一つである取材対応に関しては「まだまだですね。何を言っていいのかわからなくなるときが多いです(笑)」と初々しさも漂うが、プレーの面では既に堂々としたたたずまいを見せる。将来性豊かな大型ポイントガードの成長は、滋賀のB1復帰に欠かすことができない。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE