クラブにとって初タイトルとなる西地区優勝を引っ提げ、滋賀レイクスは1年でのB1復帰を期す。アウェーで越谷アルファーズと対戦したレギュラーシーズン最終節、第1戦は第4クォーターに接戦を抜け出し、最後は17点差で快勝。ダビー・ゴメスヘッドコーチは「素晴らしいバスケットボールができた。滋賀のブースターもたくさん来てくれた中、今日のバスケットボールを皆様にも誇りに思っていただきたい」とチームを称賛し、プレーオフに向けて確かな手応えを感じたようだ。
シーズン序盤は思ったように白星が伸びず、開幕ダッシュに成功したライジングゼファー福岡に後れを取ったものの、シーズンが進むにつれて調子を上げ、最終的には福岡に8ゲーム差をつけてみせた。チームの成績が伸びるのは、戦術の浸透や戦力の入れ替えなど様々な要因があるが、若手の成長もその一つ。今シーズンの滋賀でいえば、チーム最年少の湧川颯斗がそれに該当する。
194センチの湧川は、当初はウィングポジションでプレーすることが多かったが、徐々にポイントガードとしてコートに立つことが多くなっていった。この日もキーファー・ラベナや柏倉哲平、野本大智らガード陣と同時にコートに立つ時間帯で、ハンドラーとしてボールプッシュする場面も少なくなかった。「颯斗がポイントガードとしてプレーできるようになって、そういうラインアップもできるようになった。ガードとしてチームを背負うことが、今の彼にはできている。日本代表に近いようなレベルまで成長したことは嬉しいことです」と、その成長に目を見張るゴメスHCが「1カ月くらい前はかなり良いプレーをしていた」と証言するように、3月20日からの6試合で合計36アシスト。その最後にあたる31日は、キャリア初の10アシストをマークしている。
湧川自身も、「ボールを運んだり、ピックを使って攻める時間帯が、シーズンの初めの頃に比べたら増えたかなと思います。特にピックの使い方はだいぶ向上した感じがあるので、それができてるのが良いのかなと思います」と成長を実感している様子。「越谷戦を迎える前の練習で、すごくパスが回って良い練習ができたので、今日はそれが出せた試合だった」ということだが、湧川もこの日は2アシスト止まりだったとはいえ、ボールと人がよく動いた滋賀のオフェンスを演出した1人であることは間違いない。
U18日本代表でも主力として活躍した湧川は、福岡大附属大濠高3年時のウインターカップが終わった直後に、特別指定選手として滋賀の一員となった。湧川は大学進学の道を選ばず、滋賀に加わった時点で2023-24シーズン、つまり今シーズンのプロ契約も結んでいる。ヨーロッパでは10代でプロデビューする選手が多い中、スペイン出身のゴメスHCは「颯斗は特別な存在」として、そのポテンシャルを高く買っている。
「高校からBリーグに進むというのはあまり例がなく、日本は大学を卒業することがすごく大事にされている中、彼にはスペシャルな才能があったからこそ、プロという選択ができたのだと思います。昨シーズンはロスター外のときもありましたが、その昨シーズンから今シーズンにかけて8~9キロ体重を増やして、初めてのプロシーズンで17分くらい出場してソリッドな選手になっています。彼は日本でトップの才能を持った選手。これから輝かしい未来が待っていますし、来シーズンはどの試合も彼が一番輝いているような選手になっていくことが、次のステップに進むために必要なこと。彼のコーチとして働いていることはすごく幸せで、彼は常に謙虚な姿勢でハードにプレーして、コーチ陣に感謝の気持ちを持ちつつ日々成長してくれています」