精神面だけでなく、バスケットの部分に関しても成長はあった。山口との第2戦、チームの最多得点は17得点の上田雅也で、それに続いたのが14得点の今林萌と11得点の山本鳴海。2ケタ得点を挙げた3人がいずれも日本人選手だったことが、チームの成長を如実に示している。昨シーズンリーグで2番目に失点が少なかったディフェンスも、さらに強固なものになったという実感がある。
「昨シーズンから今シーズンの中盤まで、マイク(マイケル・クレイグ)に頼る時間帯が多かったんですが、彼が30点40点取る爆発的なスタッツではないのが今の勝ちパターンになってます。マイクが30分以上出ることもなくなってきましたし、今日もマイクがファウルトラブルで下がった第2クォーターに28点取れてる。ボールが動くようになって、今日みたいに出だしで10点くらいしか入らない試合でも、カムバックして80点前後までいくことが増えました。ディフェンスに関しては、ハーフコートの失点は昨シーズンも少なかったんですが、昨シーズン岩手(ビッグブルズ)が何をやったかというと、オールコートでプレッシャーをかけること。そこが1位との差だったかなと思うので、今シーズンはそこもみんな努力してくれて、ステップアップできてると思います」
クォーターファイナルの相手は、昨シーズンまでB2に所属した香川ファイブアローズ。レギュラーシーズン2位とあって難敵には違いないが、昨シーズンはその後B2昇格まで駆け上がったベルテックス静岡と熱戦を演じただけに、アップセットは十分に視野にある。レギュラーシーズンでアウェーのほうが勝率が高かったことも、ポジティブな材料だ。
「昨シーズンからメンバーがあまり変わってないですし、昨シーズンはどアウェーで静岡さんとやれたので、今回も超アウェーだと思うんですが、準備はできてます。去年は上田がプレーオフに出られなかった分、今回はチームとしても良い状態で、香川は倒せると思ってます。レギュラーシーズンで連敗したときはマイクがいなかったので、ようやくがっぷり四つで試合ができるなと思って、楽しみです」
最後に、長年共闘している宮田諭の早水HC評も記しておこう。人間性を重視するチーム作りをしてきた中、その人望でチームのみならず会場の雰囲気も変えることのできる宮田の存在は、コート内外で早水HCには不可欠。宮田もまた、早水HCへの信頼を強めている。
「選手に近いコーチ像で、コミュニケーションもすごく取ってくれるし、選手の良さを引き出すのは得意だと思うんです。一方で、選手と年齢や距離が近いというところもあって、どう厳しさを出していくかというのは本人も課題と感じてると思うんですが、プレーオフがかかったここ1カ月くらいで少し変わってきたかなというのも感じられて、彼自身も2年目で手応えを感じてきてるんじゃないかと思います。
僕は選手として、コーチ陣が決めたことを体現することを第一に考えてますが、彼の考えを一番汲み取れるのが僕だと思ってますし、選手には選手の言葉のほうが届くこともあるので、その部分でサポートできればと思ってます」
昨年は断念せざるを得なかったB2ライセンスを今回は取得。モチベーションも高まっている今、東京Uは早水HCに引っ張られて躍進を期す。
文・写真 吉川哲彦