ただ、ルーキーイヤーから8シーズンもプレーしてきたとなれば、当然のように思い入れも強くなり、感謝の気持ちも湧いてくるというものだ。
「プロになってからもそうですが、プロになる前もここでいろんな大会がありましたし、いろんなターニングポイントもあった。印象に残ってることは、これ1個という特別なものはないですが、地元の体育館で大勢の赤いファンに囲まれてプレーできたというのはすごく良い思い出です。新しいアリーナは1万人とキャパは大きくなりますが、ここは本当に地元なので、プロとして8年間できたのは感慨深いものがありますし、感謝してます」
シーズン終盤の佳境を迎えている今、その感慨に浸ってばかりもいられない。冒頭でも触れたように、B1のシーズン最高勝率記録を更新した昨シーズンと比べると、今シーズンは苦しい展開になっている。ワイルドカード枠の1位につけているものの、まだチャンピオンシップ進出は決まっておらず、連敗すればすぐに圏外となりかねない状況。故障者がいたとはいえ、群馬戦の前は3連敗していたとあって、危機感も募るところだ。
しかし、パトリックHCは「負けた試合は3試合ともみんな頑張っていて勝つチャンスがあった」と今のチーム状況を前向きに受け止めている。そしてそれは原も同じだ。
「メンバーが揃わなかったり、新しい選手がアジャストするのに時間がかかったり、今まで通りにやれない部分があって難しさはあったんですが、昨シーズンが上手くいきすぎたシーズンで、今はその難しさがあるのが逆に楽しい。この時期までCSに出られるかどうかというのが今まであまりなかったので、スリルがあるというか、最後の最後まで引き締まった試合ができるというのを楽しんでます」
日本代表に選ばれ、昨夏のワールドカップを戦った原が開幕時に戦線離脱していたことも、チームが例年より苦しいシーズンを送っている理由の一つ。復帰後は本来のパフォーマンスを出しきれていなかったが、少しずつ向上し、この群馬戦の直前は得点が伸びる試合も多かった。年々プレーの幅を広げ、存在感を強めている原は、チームにおける自身の立場も心得ている。
「手術を2回して、痛みじゃなくて硬さがあったのでイメージしてる動きができなかったんですが、徐々にそのギャップがなくなってきましたし、最近の試合はクリス(クリストファー・スミス)とムーン(ムーニー)がいなかったので僕がやるしかないとなって、いつもよりボールを長く持つことは意識してました」
パトリックHCは「ホームタウンヒーローなだけじゃなくて、リーグのトップディフェンダー。チームのベースはディフェンスで、原がみんなの見本になるディフェンスをしてくれる」と原を評する。まだ故障者がいる中でもスミスとムーニーがこの群馬戦で復帰し、「頼もしい仲間が帰ってきて、ここからCSに向けて勢いをつけていければいいなと思ってます」と原は語るが、その原こそが、昨シーズン逃したリーグ王者返り咲きのためのキーマンとなることは間違いない。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE