冒頭に書いた通り、東京Uは昨シーズンもプレーオフの舞台に進んでいるが、上田はシーズン終盤にケガで戦列を離れ、アウェーで戦ったクォーターファイナルのベルテックス静岡戦はベンチの後ろで見守るしかなかった。Bリーグ以降の8シーズンを全てB3でプレーした上田にとって、昨シーズンようやく導入されたプレーオフの舞台に立てなかったことは無念だった。今シーズンは、そのチャンスを逃すわけにはいかない。
「昨シーズンは本当に悔しい想いをしたというか、コートに立ちたかったというのが正直なところなので、今はプレーオフに行けるかどうかという状況で確かに苦しいんですが、コートに立つことができて、個人的には楽しむしかないと思ってます。苦しい状況だからこそ下を向かずに、ポジティブな要素を出していかなきゃいけない。それが去年できなかったことでもあるので、とにかく僕はポジティブに、チームメートに背中で見せていきたいなと思ってます」
上田は、コロナ禍のためシーズン途中で打ち切りになった2019-20シーズンに岩手ビッグブルズでプレー。上位4クラブが大混戦だった中、東京(現・横浜)エクセレンスのB2ライセンス失効に伴って1クラブのみB2に昇格することとなったが、30勝10敗で首位の佐賀バルーナーズが昇格し、29勝11敗の岩手はたった星1つの差で届かなかった。その経験がある分、上田の想いは殊更強く、福井戦を前にクラブが初めてB2ライセンスを取得したことも追い風にしようとしている。
「プレーオフに出ることが全てじゃないとは思うんですが、出ないことには何も始まらないとも思うし、せっかくフロントスタッフが今回B2ライセンスを取ってくれたので、一緒に頑張っていきたい。いろんな人の期待もあると思うので、それに応えなきゃいけないなと思ってます」
東京Uはまだ2シーズン目だが、昨シーズンからのメンバーの入れ替えは多くなく、上田は「ケミストリーは高くなってきている」と感じている。ディフェンダーの德川慎之介が欠場した福井との第1戦でも、「今林(萌)と山本(鳴海)がディフェンスで頑張ってくれて、チームディフェンスは強固なものになってると思います」と完成度の向上を実感。そこに得点力を加えられるよう、上田は自身のシュート力を発揮していきたいと考えている。
今年5月で31歳になる上田は、チームの日本人選手では46歳の宮田諭に次ぐ年長者とあって、「若手に思いきりプレーさせるということも自分の仕事の一つ。宮田さんはどちらかというとオフコートで引っ張ってくれてるので、僕はコートの中で引っ張っていきたいですし、僕の良さと若手の良さを融合させていきたいです」と責任感を持ち合わせる。そして、プレーオフに進むのはもちろんのこと、そこから勝ち進む自信も携え、一歩一歩進んでいく決意だ。
「このチームには可能性しかないと思います。プレーオフに出たら下馬評は狂わせられると思うし、自分たちのバスケットを40分間やれば勝てる。それを信じて、応援に来てくれる人も含めて一丸となって、目の前の試合を一生懸命戦っていきたいです」
文・写真 吉川哲彦