早々にレギュラーシーズン1位を確定させ、参入初年度でのリーグ制覇に向けてひた走る福井ブローウィンズ。契約第1号選手の満田丈太郎を筆頭に、B1でプレーしていた選手を多く迎え入れ、B3クラブとしては贅沢なロスターを形成したことが、他を圧倒する成績のベースとなっていることは確かだ。
しかしながら、日本バスケット界全体のレベルが向上している中で、B3のレベルも高くなり、かつクラブ数が増えたことも手伝って、楽に勝てるリーグではなくなっている。3月22日の東京ユナイテッドバスケットボールクラブ戦も、福井はプレーオフ争いの当落線上にある相手に苦戦を強いられ、81-75とわずか6点差での勝利だった。伊佐勉ヘッドコーチはもとより、選手も決してB3を甘く見てはおらず、しっかり戦ったからこそ勝ちきることができた。田渡修人は、試合をこう振り返る。
「プレーオフに向けて自分たちの完成度を高めないといけない中で、75失点というのは良かったところで、80点以上取ることもできました。得点の取られ方がイージーだったり、取られてはいけないオフェンスリバウンドも多少あったんですが、総じて自分たちがやるべきディフェンスはできたんじゃないかと思います」
強いチームは個々の役割がより明確になっているもので、福井における田渡の一番の仕事はやはりアウトサイドシュート。B1でもその威力をまざまざと見せつけてきた3ポイントは現在45%を超え、タイトル獲得が有力視されている。この日は8本中3本成功とわずかながら数字を下げてしまったが、田渡本人は8本打ったことをポジティブに考えている。
「僕の3ポイントの本数が多いのは、何が良いかというとボールが回ってるということ。僕は基本的にコーナーとか下のほうにいるんですが、下まで回ってくるのはチームとして良いオフェンスが出来てる証拠だと思います。僕のシュートが少ないと、チームが勝ってるかどうかに関係なく、オフェンスとしてはあまり上手くいってないことが多いです。全部が上手く流れないとコーナーまでボールがなかなか落ちないので、僕の本数が多くなると、必然的に良いバスケットができてるという一つの指標になるんじゃないかなと思います」
プロキャリアは10年を超え、ベテランと呼ばれる領域に入りつつある田渡。近年は故障に悩まされることも多く、サンロッカーズ渋谷での4年目を過ごした昨シーズンは30試合の出場にとどまった。プレー以外の面でチームのために尽くしてきた自負を持ちつつも、コートに立って自身の仕事を全うすることができていないという思いが強かった田渡は、福井に移籍してきた今シーズン、試合に出ているからこそ数字を残すことができているという事実を素直に喜ぶ。
「ここ数年ケガばかりで、裏方の声出しとか、チームに貢献できるところがプレーじゃない部分が多かったので、そういうところからある程度数字に出るところまできたのは嬉しいことです。自分がやるべきことをやり続けることでチームに貢献したいというのが自分の中では一番で、その中で3ポイントが入ってるというのは一つ良いことかなと思います」