「基本的なことをやり続けてきて、それが結果になって今の位置にいるので、プレーオフに向けてこれをやろうというのは特にないです。今日は相手がトレイ(・ボイド)が出たときにマッチアップを変えてビッグにしてきたので、そこへのアジャストはすごく勉強になりました。ディフェンスは1対1で守らせて、そこまでやられてないですが、オフェンスに関してはトレイに対してビッグが守ってきたところがちょっと上手くいかず、難しい1対1になってしまったので、逆にそこでどっちを取るかというせめぎ合いをコーチ陣と明確にしていければ、負けることはないんじゃないかと感じました」
BリーグになってからはB1以外を経験したことのなかった伊佐HCにとって、B3は未知の世界。チームは現時点でも4敗しかしていないが、31連勝を経て4敗目を喫したのが42試合目ということは、その前の10試合で3敗していたことになる。伊佐HCによれば、「チームとしての完成度も高くはなかったんですが、一番は僕がB3に慣れていなかったということ。これがすごく大きいです」ということだ。
「僕が求めるバスケットをもちろん追求してましたが、最初の10試合でバスケットボールの質が違うと感じて、そこからアジャストしていきました。もちろん、やりたいことの軸はブレてないですが、ポジションの一歩半歩、強度の部分をアジャストしていって、結果がついてきたという感じですね。選手よりも僕が戸惑ったんですが、今は上手くB3リーグにアジャストできたんじゃないかなと感じてます」
また、レベルに関しても伊佐HCは驚いたところがあった。思った以上にレベルの高さを感じたことが、チームを率いる立場としての危機感につながったという側面もあった。
「特に日本人選手はちょっとサイズが小さいですが、個人個人のスキルセットは正直B1とあまり変わらないかなと思ってます。全員がアグレッシブですし、シュート力に関してもB1の選手より入るんじゃないかと思うくらいの確率で決めてきますし、B1で経験したことがないくらい簡単に決められるので、そこはサプライズで、リスペクトも含めて修正が必要でした。外国籍選手に関しても、いろんなことができる選手がいてB1とは違うところがあったので、そこへのアジャストメントも難しかったというのが正直なところです」
B3の水に良い意味で慣れるところから始める必要があった伊佐HCだが、そんな伊佐HCには琉球でクラブ創設時からチーム作りに携わってきたという特筆すべき経験がある。新規参入の福井は、その経験を最大限に生かせる格好のクラブ。伊佐HCが果たすべき役割は大きく、その責任感を携えてチームにカルチャーを根づかせ、勝利を追求していく。
「文化作りもしながら、1年でB2に上がるという最大のミッションがあって、今のところそこに向かって一歩ずつ近づいてきてるのかなという実感はあります。人間的に尊敬できる選手が集まってるので、チームケミストリーや文化も思ったより早く構築できてると思います。最速B1昇格もクラブが掲げているので、まずはしっかりB2に全員で駆け上がりたいということは強く思ってます」
文・写真 吉川哲彦