B3リーグは4月9日にレギュラーシーズンの全日程を終え、昨シーズンに導入されたばかりのプレーオフに突入していく。現時点で残り2節とあって、既にプレーオフ進出を決めているチームもあるが、圧倒的な早さで一番乗りを果たしたのは新規参入の福井ブローウィンズ。2016-17シーズンに金沢武士団が作った23連勝の記録を31連勝に更新するなど、他を寄せつけない独走劇で、レギュラーシーズン1位も確定している。
とはいえ、短期決戦は何が起こるかわからない。その意味では、シーズン終盤の試合も決して消化試合にはならず、内容が問われることになる。3月22日の東京ユナイテッドバスケットボールクラブ戦は、ほぼ一貫してスターター起用してきた渡辺竜之佑が今シーズン初めて欠場するという状況だったが、81-75で勝利。伊佐勉ヘッドコーチは試合を以下のように振り返る。
「ベストメンバーが揃わない中、自分たちらしいタイムシェアをしながら、1分1分、1ポゼッションをつないでいきました。相手がディフェンスのすごく良いチームで、我々の強みを消しにかかってきていたので、今までやってきたアップテンポなバスケットはちょっとできなかったんですが、今日に関しては試合中にアジャストして勝ちきるということはできたと思います」
レギュラーシーズンも終わりに近づき、この試合が45試合目という状況では、やはりチームの完成度が気になるところ。bjリーグ時代の琉球ゴールデンキングスで指揮官としてのキャリアをスタートさせた伊佐HCは、常にハードなディフェンスを選手に求め、そのためにタイムシェアを取り入れてきた。その戦略は福井でも不変だが、伊佐HCが思い描くバスケットは今どれほどできているのか、プレーオフに向けた準備は進んでいるのか。琉球を2度bjリーグ制覇に導き、サンロッカーズ渋谷でも天皇杯を制した経験のある名将は、現状認識も抜かりなく、しっかりとチーム作りのステップを踏んでいる。
「リバウンドに課題がありますが、そこはここ数週間取り組んでいるところで、数字はポジティブにとらえてます。まだまだですがリバウンドに行く意識は出てきて、しっかり取れるようになってます。やることは明確になっていて、悪いときはディフェンスのピックアップが遅くなったりソフトになったり、オフェンスに関しては今日の途中もそうでしたが、ボールが動かなくなることがある。負けるときの原因はわかっているので、それをどれだけ出さないようにするか、出てしまったときにどれだけ早いスパンで我々のバスケットに移行できるか。残り試合は正直勝ち負けは関係ないので、そこをどれだけ突き詰められるかということと、課題がどういうふうに出るかということをあぶり出そうとしてるところです。プレーオフに向けてやりたいことがあっても、やれないならやれないで次の手を考えないといけない、それはチームで話をしています」
この日の対戦相手、東京Uはプレーオフ争いの当落線上にいるチーム。したがって、プレーオフになればクォーターファイナルで当たる可能性もあるわけだが、その相手に対して何かを試す、あるいは手の内を隠すのではなく、福井がここまで築き上げてきたバスケットをいかに昇華させるか、伊佐HCはその1点に注力する。そして、この試合からもチームがより良いバスケットを展開するためのヒントをつかんだようだ。