当然のことながら、ディクソン自身も自らに課された役割を心得ており、それが勝利に結びついたという実感もある。
「試合に入る前に、河村選手のところをどれだけ抑えられるかという話があった中で、チーム全体で河村選手のプレーを制限していった結果、こうして勝てたかなと思います。フィジカルにディフェンスすることが僕の強みというのもあるので、なるべくコンタクトを増やして相手の体力を削ろうと思ってプレーしました。河村選手は本当に上手で、抜かれるシーンも多かったんですが、ちょっとずつ修正していって、なるべく彼の前にいることを意識しました」
クラブ創設から最速でB1まで駆け上がってきた長崎も、初めてのB1の舞台では上手くいかない部分も多々ある。ディクソンも「これまでと違って負けが多いシーズンなので、毎試合チーム全体で修正していくことが多い中で、そこに僕もアジャストしていって、今チームに足りてない部分で僕ができることを探している」と、チームメートより少し遅れて立ったこの舞台で生きる道を模索している段階。B3時代から力を合わせて戦ってきた仲間に関しては、「面倒を見てもらっているので、負けないようにというか、追いつこう、あわよくば追い越そうと思ってます」とその存在をモチベーションにもしている。そして、「昨シーズンは1カ月くらいしかプレーできなかったところから、今シーズンは熊本にも行ってブースターさんの熱量も感じたんですが、今こうしてまた違った雰囲気の中でプレーできてるというのは充実感があります」とB1の舞台に立った喜びも噛みしめているところだ。困難を乗り越えて辿り着いた経緯がある分、その喜びはひとしおだろう。
長崎に必要とされて戻ってきたディクソンは、「オフェンスでも思いきりの良いプレーをしてこいと言われてるので、迷わないようにプレーできればチームにとってプラスになるかなと思います」と貢献の意識を高める。「ディフェンスと、スポットアップの3ポイント」を今の自身の役割と見定めている中で、この日は4本の3ポイントを打って前述の通り2本成功。相手にタイムアウトを取らせる効果的な1本もあり、呼び戻してくれたチームの役に立てたという感覚もあったようだ。
残り試合も少なくなり、ターゲットとしている30勝に一つでも近づきたい長崎において、ディクソンの出場機会は必ずしも保証されているわけではない。ただ、大ケガから這い上がり、チームの勝利の一助となれることを証明したディクソンのプレーは、同じく這い上がろうとしている長崎にはこれからも必要とされるはずだ。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE