「声を出したり、鼓舞したりというリーダーシップは、ミニバスの頃の経験が活きていたのかもしれません。コーチをしていたお父さんは怒ることなく、ミスしてもグッドプレーならばメチャメチャ盛り上げて褒めてくれて、それは僕だけではなくチームメイト全員に同じように接してくれました。その経験により、流れが悪いから声が出ないとか、流れが良いから声を出すという感覚もなく、常に声を出したり、チームを鼓舞したりするのが自分のバスケスタイルなのかなと思います」
高校時代はBチームから、大学でも最初からプレータイムを与えられたわけではなく、なかなか勝ち星には恵まれなかった。それでも、最上級生のときには必ずキャプテンを任され、チームからの信頼も厚い。「どのカテゴリーに入っても下から這い上がる環境ばかりだったので、練習参加だけでも慣れているところはあったのかもしれません。全然、苦ではなかったです」と常に前だけを向き、今できることに全力を尽くしてきた。日常を疎かにしないことが、チャンスを掴む秘訣かもしれない。
「バスケ以外のところを大事にしているかなって、自分でも思います。プロ選手がバスケをがんばるのは当たり前です。だから、そこで勝負しても僕のようなエリートではない選手は勝てないので、違うところで差をつけるしかないなと思ってがんばっています」
アグレッシブ過ぎるくらい、元気だなと言われるぐらいチームを盛り上げたい
川崎では練習とともに、スクールコーチの経験も益子を豊かにしてくれた。「4歳からスクール生がいるので、ボールをキャッチすることやジャンプの仕方を教えましたが、自分にとっても本当に勉強になりました。ジャンプするだけでも楽しんでくれる子たちですが、4歳でも2つのボールでドリブルを突いたり、走ってレイアップを決めたり、すごいプレーをします。学校訪問にも行かせていただき、小学生と一緒にバスケをしました。そこでは、1本のシュートでみんなが盛り上がりながら楽しんでいたので、その心はいくつになっても大事だなと思わされました」と、どんなことも吸収する。スクールで一緒にバスケを楽しんだ子どもたちが、最初のファンになってくれるかもしれない。
「練習参加から上がってきましたが、これまでのシーズンを通してチームの練習に参加し、このタイミングでチームに合流してきた自分の役割は、シュートを決めることではないと思っています。若さやこの時期にプロ契約をしたからこそ1人だけアグレッシブすぎるぐらい、元気だなと言われるぐらい、シュートやスタッツ以外のところでチームを盛り上げて少しでも背中を押して、流れが悪いときには少しでも取り戻して、みんなが気持ち良くプレーできるようにしていきたいです」
ようやくプロ選手としての道を歩きはじめた益子だが、3×3ではBリーガーの中で最高位となる国内ランキング現在5位につけ、パリ2024オリンピックにも近い存在である。2024年を飛躍の年にするためにも、この先も落ちているチャンスを貪欲に掴み続けなければならない。
川崎ブレイブサンダース #42 益子拓己
今できることに全力を尽くして掴んだチャンス
前編 足が尋常ではないくらいブルブルと震えて…
後編 大事なのは、バスケ以外の日常を疎かにしないこと
文・写真 泉誠一