前半にディフェンスで試合の方向性を決めた須藤は、後半にはオフェンスでもチームに勝利を引き寄せる働きを見せた。得点は3ポイント2本による6点止まりだったものの、第4クォーターに飛び出したその2本の3ポイントは、いずれも相手にタイムアウトを取らせる会心の一撃だった。「自分が打つためのフォーメーションをやってくれて、周りもパスをくれたり動いたりしてくれるので、打つべきところで打たないとチームの流れを切ってしまう。どの時間帯でも、自分の仕事の3ポイントとディフェンスでチームを助けることができるように」という須藤も「昨シーズンはああいう場面で外してしまうことが多かった」ということだが、今シーズンは試合終了間際に逆転3ポイントを決める大仕事も披露しており、自身の成長を実感。青木HCも、ここぞという局面で自身の役割を全うする須藤に、選手としての進化を感じている。
「我慢して我慢して、あの場面でシュートを決めてくれたので、『何かやってくれるんじゃないか』という選手にまた一歩上がってくれたと思います。試合後に『最後のシュート良かったな』と言ったら『あれがなかったらヤバかったですね』と言ってたんですが(笑)、彼もファウルのことを少し気にしていた中で、それを超えて仕事ができる選手になったというのは、2、3年前のことを考えると目の覚めるような活躍でした」
この日の勝利でも、チームはまだ18勝23敗と黒星が先行し、中地区6位。昨シーズン大きく飛躍したことを考えると、満足できる成績ではない。ただ、昨シーズンの経験がチームにとっても、個々にとってもプラスになっていることは間違いなく、須藤もその経験をこの苦しい状況で生かそうとしているところだ。
「まだ全然チャンスはあると思うし、チームとしてもそこに向かってしっかり戦えているんですが、負けた後に良いゲームをしても、その後に連勝ができない。課題の部分を克服して変えていかないとCSは見えてこない。1人ひとりがコートで、短い時間でも表現することがきっかけになると思うので、それぞれのステップアップが必要になってくると思います。自分も、まず自分の仕事をコートで表現しつつ、ベンチでもコートにいるメンバーを鼓舞できるように影響を与えていきたいですし、ゲームの終盤でもそれを表現できるプレーヤーになっていかないといけないと思ってます」
カイ・ソットの加入を受けてビッグラインアップ解禁に踏みきった横浜BCにとって、この日の前半は河村に頼りすぎることのないチームオフェンスを機能させる、素晴らしい内容だった。どの選手も得点に絡むことや、良いディフェンスが良いオフェンスにつながることを考えれば、須藤の働きはこれまで以上に重要となってくる。青木HCが「両方のエンドで良い終わり方をすることが大事」と常々口にする横浜BCにおいて、3&Dプレーヤーの地位を確立した須藤の存在は大きなカギを握る。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE